三菱商事株式会社様

 

連結経営基盤「MINTS-TA」構築プロジェクト


環境変化に対応し
連結経営を支えるシステムを構築

プロフィール

創業:1954年
本社所在地:東京都千代田区
事業内容:地球環境・インフラ事業、新産業金融事業、エネルギー事業、金属、機械、化学品、生活産業、ITなど幅広い産業を事業領域とする総合商社

http://www.mitsubishicorp.com/

2014年4月、三菱商事株式会社(以下、三菱商事)様の営業取引・会計システムを中心とした「MINTS-TA」がサービスインしました。今回サービスインしたのは、三菱商事様の連結経営をIT面から支える基幹システム(単体)です。過去に類を見ない開発規模と、グループ連結経営を見据えた標準化・共通化の推進、柔軟性・拡張性の担保という大きな課題に向け、ピーク時にはビジネスパートナーを含め約600人もの人員を投入しプロジェクトを支援しました。

変化する「会社のかたち」に対応した経営基幹システムの構築

2010年、三菱商事様は内外環境認識を踏まえ、『継続的企業価値』の創出に向けた3カ年の中期経営計画を発表。その中期経営計画を、IT面から支えるシステムの構築を目的として、新たな連結経営基幹システム導入を決定しました。

そのシステム構築の背景としてキーワードとなったのが「会社のかたち・環境の変化への対応」です。
まず、ビジネスの現場や実質的な事業推進母体が子会社・関連会社にシフトしていく中で、三菱商事様、また三菱商事グループ全体のビジネスデザインが大きく様変わりしていました。さらに、リーマンショック後の経済的危機への対応、会社法改正などによる内部統制・コンプライアンスの強化、国際会計基準への対応など、変化を求められるさまざまな課題も迫っていました。

こうした動きに対応すべく、三菱商事様の新たな連結経営基盤を支えるに相応しいシステムを構築しようというのが、連結経営基幹システム全体の基本コンセプトでした。

そしてこの4月、その第1段階として、営業取引・会計機能を備えたシステム「MINTS-TA」が全面稼働しました。これは連結経営基幹システムの中の、コアとなる三菱商事様単体システムという位置づけになります。

「われわれが構想しているプロジェクト全体像から言えば道半ばということになりますが、その最も重要な骨格が出来上がったということです。商社のビジネスは多岐にわたり、三菱商事グループ企業の業態も多種多様ですが、トレーディング系の子会社には極力広げていき、連結経営全体を支えるシステムに進化させることが最終的な目的です」とビジネスサービス部門IT企画部部長代行兼 ITシステム室長の樋口 毅様は語ります。

当システムを構築するに当たり、「より良いものを、より安く構築し、より広く利用する」という指針が掲げられました。これも連結経営全体への展開を念頭に置いたものです。

今後は、計画されている新たな機能の装備、運用の効率化、さらなるコスト削減にチャレンジし、システムをさらに進化させ、適用範囲を広げていくことでゴールを目指していきます。

■MINTS(MC Integrated Information Systems)体系図


経営情報を一元的に集約し、今必要な情報が迅速に入手可能に

「MINTS-TA」は、営業取引システム「MINTS-TR」と会計システム「MINTS-AC」と、その周辺の単体経営情報システム「MINTS-BI」、権限管理システム「MINTS-AU」、マスター管理システム「MINTS-MDM」を総称したものです。(上図参照)

会社のかたち・環境の変化という背景に対応すべく、システム運用によって具体的に期待される効果には「連結経営情報の可視化」「連結ベースでの取引管理の強化」「IFRSなど、法・制度への対応の迅速化」などがありました。

その際ポイントの一つとなるのが「経営情報の一元的集約」です。これまで複数システムに分散していた情報を集約し、経営・業務に必要な情報の適時・迅速な入手を「MINTS-BI」の機能充実などにより実現しました。インメモリーデータベース「SAP HANA※1」の導入によりレスポンスの速さも大幅に向上しました。

また、認証基盤と連携したシングルサインオン※2によって、ユーザーの利便性向上を図るとともに、権限チェックなど情報セキュリティ面の向上を果たしました。さらに、タスクリストなど、PUSH型機能※3を実装することで管理精度の向上も実現しました。

システム構築における技術面では、SAP ERPの継続採用・活用領域の拡大に加え、ユーザーインターフェースやビジネスロジックの自由度・拡張性を高めるために、SAP ERPとOFM(Oracle Fusion Middleware)を組み合わせた「SOA※4基盤」を新たに導入したことも注目すべき点です。これによりユーザーインターフェースの自由度が高まり操作性が向上。さらにOracle ADF※5が提供するコンポーネントを活用することでコーディングの省力化が図られました。

ESB※6を通じたシステム間疎結合も重要なポイントです。それぞれのシステムを直接結ぶのではなく、共通のインターフェースを通してフレキシブルに情報をやり取りする基盤をつくったことで、他システムとの連携が、セキュリティ管理面も含めて容易となりました。これにより、今後の開発・維持運用作業の効率化、コスト削減における大きなメリットが期待されます。

※1 SAP HANA … 大量データをサーバーのメインメモリーでリアルタイムに処理するインメモリー・コンピューティング技術。これまでにかかっていた作業時間を大幅に短縮し、わずか数秒で必要なデータを利用できるようになった。

※2 シングルサインオン … 一度の利用者認証で複数のコンピュータやソフトウェア、サービスなどを利用できるようにすること。

※3 PUSH型機能 … 端末側からのリクエストがなくても、サーバー側が一方的に情報を送り出し、端末に表示する機能。

※4 SOA(Service Oriented Architecture)… サービス指向アーキテクチャ。アプリケーションソフト自体に他のソフトウェアとの連携機能を持たせ、大規模なシステムを「サービス」の集まりとして構築する設計手法。

※5 Oracle ADF(Oracle Application Development Framework)… エンドツーエンドのアプリケーション・フレームワーク。アプリケーションの実装を簡略化および迅速化する。

※6 ESB(Enterprise Service Bus)… 企業内で稼働しているさまざまなシステムを連携させる基盤となるミドルウェア。

システム全体を貫く思想を確保しつつ個別最適と標準化・共通化を見極める

今回のプロジェクトは、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)、三菱商事様にとって今まで経験したことのない大規模なシステム開発であり、加えて、新しい技術の適用や連結経営に相応しい基盤として、システムの柔軟性、拡張性、経済性を視野に入れた標準化、共通化といった大きなチャレンジがありました。

要件定義の工程ではほぼ毎日、連結経営基盤としての骨格をつくり上げるため、システム構造の前提となる標準化、共通化の範囲と個別最適化の範囲のすり合わせなど、具体的なシステム要件を固める会議を開催しました。日本TCSはSOA基盤の新しい技術の習得だけでなく、標準化や共通化のレベル、粒度をどこに設定するかなど、最適なシステム構築に向けたアドバイスを積極的に提示。そこでの検討の成果が今のSOA基盤のベースとなっています。一方、プロジェクト推進に当たっては、いろいろな課題にもぶつかり、当初想定していたシステム規模が膨らみ、稼働の時期を一部先送りするという苦渋の決断もありました。

「未経験の規模の開発でしたので、プロジェクト管理は苦労の連続でした。稼働時期の変更は大きな決断です。パートナーである日本TCSもプロジェクトの見通しをできる限り定量的に示すなど冷静な分析を示してくれ、結果最善の判断ができたと思っています。」(樋口様)

「2014年4月の期限に向かって、日本TCSとはまさに二人三脚で進み、無事稼働できたという点において、非常に達成感のあるプロジェクトだったと感じています」と、ビジネスサービス部門 IT企画部 部付部長ITシステム室基幹システム担当の野中 礼雄様は語ります。

また、ビジネスサービス部門 IT企画部 課長 ITシステム室基幹システム担当の藤田 智行様は、「プロジェクトとしてコストや納期を守るためにMINTS-TAに要件を絞り開発効率を優先させるもの、MINTS-TA以外への展開を見据えて標準化を推進すべきものについて、幾度となく議論を行いました。その結果、プロジェクトとしてのQCDを守りつつ、連結経営基盤も見据えた骨格をつくり上げることができたと思います」と、現場で繰り返された当時のやり取りを振り返りました。

詳細設計からテストフェーズにおいては、より精緻な進捗管理を行うためのツールを導入。進捗の可視化、品質分析を細かく行い、早期にリスクを検知し対策を講じる仕組みを構築し、新たな目標期限に向け、プロジェクトは計画通りに進行しました。


「業務の知見と文化の共有」+「IT知識の蓄積とグローバル対応」のシナジー効果

今後、当システムを維持・運用し、さらに連結経営の基盤として展開していくに当たり、樋口様は日本TCSの設立に非常に大きなシナジーを感じています。

「日本TCSとは、7月の合弁企業設立以前から、長きにわたって協業を進め、単なる業務の知見だけではなく、企業文化の共有や人的ネットワークに基づく相互理解がありました。基幹システムをまかせるパートナーとしては、非常に重要な要素です。今後は、さらに深くかつ幅広いIT技術やグローバル対応による付加価値提供が十分に期待できます。『より良いものを、より安く構築し、より広く利用する』という当システムの構築指針が、ますます高いレベルで実現されることを期待しています。また、一連のプロジェクトで培った技術やノウハウを、三菱商事グループ企業外に対しても、一つの事業として幅広く展開していくことも、その後の可能性として十分に期待しています」

当プロジェクトにおける第一のゴールは、連結経営基幹システムの構築です。しかし、そこからもさらなる進化、新たな展開は続いていきます。

■MINTSシステム全体イメージ

SOA基盤上の7つの基盤の役割
1.ポータル基盤:業務システムへの入り口の一元化 2.UI(ユーザーインターフェース)基盤:業務アプリ画面の統一 3.サービス管理基盤:サービスの管理とインターフェースの提供 4.サービス連携基盤:画面・プロセス・ビジネスロジックの連携 5.プロセス管理基盤:ビジネスプロセスの管理、制御 6.Non-SAP/Java基盤:ビジネスロジックの実装・実行/ビジネスデータの管理 7.SAP/ABAP基盤:ビジネスロジックの実装・実行/ビジネスデータの管理/SAP ERP機能

ITに関する知見・総合力を発揮し、使い勝手の良いシステムを実現

これほど大規模なプロジェクトとなった理由としては、個別システムごとではなく、企業の経営を支える基幹システム全体を一気に開発することにありました。それだけに、さまざまなインフラ、アプリケーションなどに関する技術や仕組みが検討され、新たに導入されています。

経営情報システム「MINTS-BI」を担当した森本 大樹(システムグループ MC基幹システム技術統括ユニット)は、日本TCSの誕生によって、新技術を導入した当システムがさらに進化し新たな展開を見せるだろうと期待しています。

「私の担当分野においては、SAP社のHANAというインメモリーデータベースの導入が大きなポイントでした。この新しいアーキテクチャ上でシステムを構築することで、取り扱うデータ量が大幅に増加したにも関わらず、処理速度は向上しています。開発段階では、都度、お客さまにアーキテクチャについてご理解いただき、また討議すべきところは討議をするという相互理解が成功につながったと思います。新会社の設立により、HANAを含め、新技術に対する高い知識・経験を持つ社員が増えたことは大きな強みとなりますし、それぞれの情報を共有することで、新たな技術的展開や幅広いメニュー提案が可能になると思っています」
また、当システムの構築に関するキーワードの一つとして「集約化」があると、会計システム「MINTS-AC」を担当した桜井 晴之(システムグループ MC基幹システム業務統括ユニット)は言います。

「以前のシステムでは、似た機能がいくつかに分散されて存在しましたが、それを集約するという方向性が、設計段階から強く意識されていました。結果として使い方も集約され、操作性の向上にもつながったと思います。エンドユーザーも含め、さまざまなステークホルダーの方々と定期的にお話をする機会を設定していただいたことで、独りよがりではない、使い勝手の良いシステムが構築できたのだと思います。テストフェーズにおいても、計画書に基づくテストを一通り終えた後、業務知識を持っている経験者による評価テストを、繰り返ししっかりと行うことができました。だからこそ、本稼働後も業務が止まるような問題が一切起こることなく、安定稼働ができているのだと思います」

テスト稼働の充実は、スケジュールの変更という決断がもたらしたものでした。それも、しっかりと計画性に基づく細かな協議があったからこそと、技術領域全般を担当したシステムグループ MC基幹システム技術統括ユニットの高木 暁広は言います。

「一言でスケジュール変更と言っても、これだけの規模のプロジェクトにおいては、さまざまな調整が必要でしたし、メンバーの集中力維持も大きな課題でした。三菱商事様の方々と綿密な協議を重ね、すべての見通しを立てた上で計画を進行できたことで、プロジェクトに携わるすべての者がモチベーションを保ったまま、サービスインにこぎつけたのだと感じています。また、プロジェクト期間全体を通して、その時々の課題や進捗状況を、チームを越えて共有できる体制が確立していたことも成功の秘訣だと思います。情報を逐一共有し確認しながら計画を進めるのは、正直やりづらい部分もあるのですが、規模が大きくなればなるほど大切なことだと、今、実感しています」

新たに獲得した技術的知識・経験を活かす

今回のプロジェクトにおいて導入した技術的ポイントの一つとして、SAP ERPの継続採用に加え、OFMも同時に採用するという点がありました。その部分においても、今後日本TCSとしての優位性が発揮できるだろうと、技術領域全般を統括する立場にあった、システムグループ MC基幹システム技術統括ユニット ユニット長の大石 祥文は思っています。

「われわれにとっては新たな試みでしたが、システム構築の省力化やユーザビリティの向上などにおいて大きなメリットがあると確信して提案しました。当社の提案に対して三菱商事様が決断され、一緒に苦労しながら導入を進めてきたわけですが、今後の展開としては、エンドユーザー、開発者、管理者が、OFM基盤上ですべて事足りるような仕組みの実現を目指しています。この分野においても、日本TCSとなって新たに注入された知識・経験をフルに活かすことで、実効性は格段にアップするでしょう。今回のプロジェクトにおいて、現在の商社にアジャストした基幹システムの一つの型はできたと考えています。これをいかに進化・発展させ、より広いターゲットに向けて展開していけるかということは、日本TCSの総合力にかかっていると思います」

この大規模プロジェクトで得たノウハウや経験は数えきれないほどあり、それらすべてを今後の日本TCS発展に向けて活かしていきたいと、上席執行役員・岩﨑 一郎は望んでいます。

「これだけの人数を動かす最大のポイントは、良い目的を作って、それをみんなで共有し、ベクトルを合わせることだということを改めて実感しました。プロジェクトの各フェーズにおいて、非常に大きな決断の下、その時々の良い目的を三菱商事様がしっかりと示してくれたからこそ、その目的に向かってわれわれが全力でサポートすることができた。またそれによって、多くの人財も育ったと感じています。当プロジェクトのゴールはまだまだ先にあります。ここで得た知見に加え、日本TCSとなって得た深い技術的知識・経験、幅広いグローバルネットワークを積極的に活用していくことで、当社の推進力は大きく向上すると確信しています」


※掲載内容は2014年10月時点のものです

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