Focal Point

事業変革を実現するDXが日本を元気にする

 

元気を失った日本企業

長い海外勤務を経て日本に帰国した当時、私が感じたことは、「日本企業に元気がなくなってしまった」ことです。日本の「島国メンタリティー」はいまだ根強く、「お変わりありませんか(変わらないことは良いこと)」の文化と自前主義が強固に根差しています。内向きの力が強いため会社組織は硬直化しており、行動を起こすまでに時間がかかる傾向があります。これらが、日本企業が元気を失った原因の一つでしょう。昨今、金融機関や製造業、高等教育機関など、特に、伝統的に規制によって守られてきた組織に活気がありません。その要因は何でしょう? 10年間の海外駐在期間を含む国内銀行での勤務を経てGEジャパンへ転職した私は、日本のGEデジタル立ち上げ・運営を主導しました。ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)は、多様な人種の、異なる文化的バックグラウンドを持つ社員同士がともに働き、一人一人が主体性を持って仕事をやり遂げ、さらに、それが公正に評価される風土を備えた会社でした。その後GEジャパンを退職し、このたび、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)の一員に加わることとなりました。

一方で私は、日本企業の実行力は世界一であり、さらに高い技術力を背景として、イノベーションを生み出すポテンシャルも秘めていると考えています。過去には世界のビジネスを一変させるイノベーションを生み出した企業も多くありましたが、現在はそのポテンシャルを引き出せていません。イノベーションを生み出す組織に必要な要素を「Business」、「Technology」、「Creativity」の三つに分類する「BTCモデル」で考えたとき、日本企業は伝統的に「Business」と「Technology」が得意で、最後の「Creativity」が圧倒的に弱い。その原因の一つに、「自前主義=強み」との認識に基づいた、他企業や大学などの外部組織と協働して価値を創造する「オープンイノベーション」の不足が挙げられます。

経済産業省の『通商白書2017 ※1』の調査によると、対象企業の半数以上がオープンイノベーションの重要性を認識しているものの、取り組みが進展していないと答えています。研究開発においても、「自社単独で開発を行っている」と回答した企業が62.2%に上っており、自前主義から脱却できていないことが示唆されます(表1参照)。今後、再び日本企業がイノベーションを生み出すようになるためには、外部組織とのコラボレーションがカギになるでしょう。

※1:『 通商白書2017』 第Ⅲ部第4章第4節 「オープンイノベーションの推進」(※PDFが開きます)

 

事業変革を実現するDX を生み出すために


日本企業が今後グローバルで生き残るためには、マーケットの動向にタイムリーに適応するデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要不可欠です。DXとは、「グローバルトレンドをタイムリーに見極め、デジタル技術を駆使して継続的にビジネスイノベーションを実施し続ける」ことだと、私は考えています。しかし現在、日本においてインパクトのある事業変革を実現するDXはほとんど生まれていません。中には、CDO(Chief Digital Officer)を設ける企業も出てきましたが、主にコーポレート部門に置かれ、営業部門との連携が不足しており、予算・権限も限定的です。IDC Japan社の調査※ 2 によると、DXへ積極的に取り組む企業の実に27.9%が、DXを専任とする新部門を設置し取り組みの中核としています。またそのうち31.4%の企業は、「既存事業とは独立してデジタル化に取り組み、新たな事業の創出を目指している」と回答。さらにそれらの企業では、トップのビジョン発信とCDOの設置比率も高く、大胆なイノベーションを目指す姿勢が顕著に見られ、今後の動きが注目されます(表2 参照)。

DXの取り組みには三つのポイントがあります。
最も重要なのは、経営トップがオーナーを務めること。なぜならば、DXは単なるITビジネスの変化にとどまらない、全社を挙げた事業変革であり、それは経営トップの専管事項だからです。
第2のポイントは、予算・権限を与えられたCDOが率いる部門横断的なDXチームが組織されること。
そして最後のポイントは、自社のビジネスにとって最も重要なミッションを設定し、そのミッションに基づいたDXチームとすること。ミッションベースドなチームに十分なリソースを与え、機動的に動ける体制を築くことが重要です。

※2: IDC Japan株式会社「 2018年内企業における『第2のIT部門』の状況」

 

日本型DXの推進


日本企業のDXをご支援すべく、日本TCSはこのたびCDIO(Chief Digital Innovation Officer)の職を設け、私がその任に当たることとなりました。また就任に当たり、CDIO直下にDX支援の専門組織であるBIU(Business Innovation Unit)を立ち上げました。BIU は「事業戦略室」、「DX 」、「アライアンス&COIN™ ※ 3」の3 チームから構成されます。

事業戦略室は国を超え業界を超えた新しい仕事の在り方を考案し、日本TCSのテクノロジーと組み合わせることで、新しい価値をお客様へご提案します。DXチームは、日本企業のDXを事業変革にまで発展させる道のりをともに創造してまいります。アライアンス&COIN チームは、アカデミア・スタートアップ・パートナーを有機的なネットワークでつなぎ、お客様のイノベーションを実現します。具体的には、ロボティクスなど日本の大学の得意分野で共同研究を行い、そこに勢いのあるスタートアップ企業を巻き込み、各国政府や有力ベンダーなど世界中のパートナーとともにグローバルスケールのビジネスへと発展させていきます。

DXの推進において、日本は待ったなしの状況に置かれています。日本TCSは、タタコンサルタンシーサービシズがグローバルで行っているDX支援事例を日本のビジネスに応用しながら、お客様が事業を変革するDXジャーニーをご支援してまいります。

※ 3:Co-Innovation Network(COIN)。TCSと連携する、スタートアップ、学術・研究機関、パートナー企業などの各界の専門グループと、TCS内の500人を超える研究員から構築される共同研究ネットワーク。

>> 概要はこちら ※英語版PDFが開きます

 

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ
専務・チーフデジタルイノベーションオフィサ(CDIO)
中村 哲也

1988年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。国内外で営業や経営企画、システム導入、3 行統合をはじめ幅広い業務に従事。2007年、GEジャパンに入社。主に金融機関とのパートナーシップ構築を図る金融法人部や大手日本企業との戦略的パートナーシップ構築を図る法人営業推進部で活躍。2012年から、日本におけるGEデジタルの立ち上げ・運営を主導。同社の常務執行役員を経て、2018年4月、日本TCS専務・CDIOに就任。

 

2018年11月掲載

  ▶ 当社 季刊広報誌「CATALYST」Vol.17より転載 PDFはこちら

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