Point of View

テレワーカーの健康状態(ウェルビーイング)
を管理することの意義とは

 

Sangita Garg
TCS マイクロソフト事業部門職場アナリティクスヘッド

Madhurya Bhavani Hariharan
TCS マイクロソフト事業部門HRヘッド

主要な所見

前例のないこの不確実性の時代に、企業、とりわけ人事部門では、アナリティクス技術を使うことで、テレワーカーの健康状態(ウェルビーイング:肉体的、精神的、そして社会的にも、すべてが満たされた状態)を管理することができます。

  • テレワーカーは、新しい、そしてありふれた個人的及び職務上のストレス要因に絶えず直面しています。
  • アナリティクス技術を利用することで、従業員は自分自身の改善を行うことができます。また人事部門のリーダーは従業員のストレスレベルを把握して、パフォーマンスへの影響の有無を確認することができます。
  • アナリティクス技術は、人の判断に介入しデータに基づいた意思決定を促します。そしてアドホックな要望に適宜対応するといった従業員間のコラボレーションによって発生する作業負担を和らげます。

 

ロックダウン後の生活は今までとは異なり、それは職場でも同じことが言えます。実際、 フォーチュン500社のCEO を対象とした最近の調査で、リーダー達がパンデミック後の仕事や職場の人々の将来についてどのように予測しているかが明らかになりました。

調査によると、回答者の4分の1以上 (26.5%) が、90%の従業員がこれまで通りの職場では勤務しないと予測しており、回答者の半数以上 (51%) が、出張もCOVID-19以前のレベルには戻らないと考えています。簡単に言えば、従業員の大部分がテレワークの勤務形態を継続していくことが予想されるのです。

重要なポイントは何でしょうか。世界中のあらゆる産業界の企業は、従業員がいつでもどこでも働くことができるワークエコシステムを採用すること、従業員の健康状態を含めて彼らを守ること、さらに事業の再生に向けて前進することが求められるのです。しかし、企業、また働く人々は、このパラダイムシフトに対応できるのでしょうか。

より高い生産性の要求とストレスへの対応

国境や文化を越えて、家庭内に費やすエネルギー、個人的な責任と職務上の責任の両立などテレワーカーは様々な新しい課題に直面しています。従業員は、高い生産性目標、新しいテクノロジーのもつ課題、生活上の不安に対処しつつ、家庭内の用事を仕事を中断しながらも対応しています。このような微妙なバランスの取り方は、ほとんどの人にとって未知の領域であり、個人や、チームの人間関係、会社の組織全体、そして家庭にも大きな負担をかけることになります。

感情的な苦悩、恐怖や不安が日常生活の混乱や大きな変化と組み合わさることで、パフォーマンスに悪影響を与え、ビジネス全体に波及する可能性があります。

在宅勤務:その良い点、悪い点、不快を感じる点

前例のない世界的なロックダウンに伴い、事実上あらゆる産業のあらゆる場所で、従業員が毎日、何週間も、何ヶ月も、自宅で仕事をするという大きなパラダイムシフトが起こりました。以前はリモートで働くということはボーナスや、特典と考えられていました。しかし現在では、両親が自宅で仕事を、時にはその場しのぎの作業場所を確保しながら行い、家事をこなし、仕事に追われ、子供たちの世話をし、配偶者と会話をし、食事の準備をするなど、すべてをうまくこなすことに苦労している状況です。

 COVID-19以前の世界では、 ほとんどの人は、新しい一日の始まりにスィッチを入れ、夕方にはスィッチを切って仕事の世界を管理していました。そうすることで個人の生活と仕事を明確に切り分けていたのです。

通常、人事担当者は、自社のビジネスを担う人材を管理することは当然のことと考えています。しかし、人々の働き方が新しくなり、急激な変化が起こっていることは、従業員1人1人の精神面、感情面の健康状態を確保するための方法を把握し、議論し、作成する必要があることを意味しています。このやり方が重要なのは、後になって予期しない事象で企業に不意打ちをかけるような潜在的なストレスがないようにするためです。

それに応じたアプリケーションがあるのではないか?そうとも言えません。人事担当者が従業員に何が起きているかを測定するのに役立つワークプレースアナリティクスがあります。個人、チーム、組織の区分に分けて夫々みてみましょう。

個人: 中断や生産性を管理
私たちは1人1人違います。それぞれが、公の整えられたオフィス環境から境界が存在しない在宅勤務への移行に対処するために、異なる仕組みを必要としています。そしてこの課題は、配偶者の有無や社会文化的環境とは関係なく、全く正当なものです。例えば、公的な職場では、昼休みは厳密に30分であり、食事休憩のために決められた時間とみなされます。在宅勤務では、昼休みは全く違ったものになります。机で食事をしたり、子供たちに食事を作ったり、前もって決められた30分よりも時間がかかってしまうことがあるでしょう。同じようにホームオフィスで何か用が入ってさらに手を休めることがあれば、自分の行動を説明したり、その分の時間を埋め合わせるために他の作業に没頭したりしたくなることがあります。

このような一見したところ取るに足らない行動や注意散漫が積み重なって、個人にストレスの流れが徐々にできていきます。人間は習慣の生き物であり、その習慣を変えることは容易ではなく、対処の仕組みや支援が必要です。

人事担当者がするべき適切な質問:

  • 新しい就労形態に対処する能力に欠けていることを共有するための安全な空間と環境が個人に提供されていますか? 組織は互換性のないツールやプロセスについての不満は聞いていても、ウェルビーイングについては聞いていません。助けを求めることにはまだタブーがあるのです。
  • 新しい勤務モデルで作成された様々なコラボレーション状態の中で、個人は重要なことに集中するための十分な時間を得られているでしょうか?
  • 企業はどのようにして個人がストレスに対処するのを支援し、適応するための指導や支援グループを提供することができるでしょうか?

 

チーム:遠く離れた場所からハイパフォーマンスなチームを構築する
リーダーの多くは、リモートで作業するチームを最適に管理する方法を十分に持ち合わせていません。以前、最も優れたマネージャーたちは、「私が、何時から仕事を始めたかというような細かいところまで管理するのではなく、成果物の品質を重視しています」と言っていました。しかし、チーム全体がリモートで作業しているとなると話は別です。突如として、この考え方は通用しなくなります。マネージャーたちは、個人やチームの生産性を捉える方法に取り組んでいます。例えば、いつも遅刻するチームメンバーがいたのですが、大きなグループだったので、仲間からの圧力のようなもので、その行動が強制的によくなったことがあります。チーム力学に影響を及ぼす個人の振る舞い、作業現場での存在感、声の調子、歩行速度、姿勢、その他の微妙な非言語的な部分で集められた情報は今や使えません。最も優れたマネージャーでさえ、このような非言語的な側面がないため、チーム全体や個別に評価する方法について途方に暮れているのです。

関連する質問:

  • それぞれのチームに関して80:20の法則(パレートの法則)は、パンデミック後どのように変化しましたか?
  • チーム内に新たなプレッシャーがかかる「ホットスポット」がありますか? 「はい」 の場合、どうすれば彼らを落ち着かせることができますか?
  • これらのチームの中には、すぐにでも関与することが必要なチームもありますか? リモートワーク・モデル以外に、混乱期、形成期、統一期の各段階を繰り返して行う必要があるチームもあります。

 

組織:コラボレーションも過ぎたるは及ばざるが如しである場合
CEOは主に、製品、サービス、オペレーションを改良して収益を維持することに重点を置きますが、部門の責任者や経営幹部は、デリバリの安定化、販売、安定した働き方、プロセスのデジタル化を中心にしています。しかし、そこに多くの企業が新しいリモートワーク・モデルをエンドツーエンドで見る場合に、統合された考え方やガバナンスを作成できないという点でギャップが生じているのです。その結果、多くの組織では、コラボレーションにおいて多大な負担が発生しています。コラボレーションは、組織の基盤として必須のものであり、多くの企業が取り組み、目指しています。課題は、社内のコラボレーションに多くの時間を取られ、優先的な事に注力する時間が減り、それによってシステムやチーム、個人にストレスがかかることです。時には、社内コミュニケーションやチェンジマネージメント、タレントマネジメント・チームでさえ、正しく把握できません。 おそらく、そのような組織はそれほど多くの料理教室や、リモートのヨガ教室、コーヒーを飲みながらの情報共有の場などは必要ないのでしょう。「組織への帰属」よりも「チームへの帰属」を再構築する方が重要かもしれないと考えてみて下さい。そのため、部門間または組織レベルでエンゲージメントの規模を調整するために包括的な見方をすることが重要です。チームリーダーやマネージャが、優先事項と働き方を確立できる時間を確保してあげることが不可欠です。

各チームが必要とするペースでソーシャルコラボレーションを行い、チームに開始させるようにする方が効果的であると考えてください。

関連する質問:

  • 私の会社はコラボレーションに十分な時間を取れているのでしょうか? 多すぎるのはどんなときでしょうか?
  • 必要以上にコラボレーションをしてしまうのは、どの部分でしょうか?
  • 組織レベルでは、ストレスがたまるホットスポットはどこでしょうか? その部分はどのようにかかわっていったらよいでしょうか?
  • 経営幹部が関わっていく策を作成するために利用できる社員の満足度やコラボレーションに関するデータやインサイトには、どのようなものがあるでしょうか?

モダンワークプレイス アナリティクスを活用した意思決定の促進

企業のCEOや経営幹部がこれらの質問に答えられるようにするということは、データと分析の力が必要ということです。今日の大企業および中堅企業は、様々なデータと分析ツールを活用して活動と生産性を測定し、タレントマネジメントのプロセスが確実に遵守されるようにしています。これらのエンタープライズツールやプラットフォームの多くは、データシグナルを収集して保存しています。これらには、タレントマネジメントのプロセスを可能にするツールだけでなく、メッセージングツール、コラボレーションツール、アイデアを保管しておくツールも含まれます。たとえば、Microsoft Outlookは、Outlook受信トレイのツールバーに埋め込まれた 「マイ・アナリティクス」 ボタンまたは 「インサイト」 ボタンを使って、作業やメッセージングのパターンについて、個人にOffice 365のデータから収集したデータを提供することが可能で、交換ツールとして機能しています。

デジタルコラボレーションを測定し従業員のウェルビーイングを理解
リモートワークプレイスにはデジタルコラボレーションのフロントとセンターがあるため、そのコラボレーションの効果を測定する必要があります。測定フレームワークは、コラボレーション・プラットフォームの有効化と採用からすべてをカバーし、データにガイドされた介入主導のユーザー行動変革プログラムの作成を支援します。これを実現するには、企業がメール、インスタントメッセージやチャット、ファイルの共同編集、通話、スケジュールされた会議やアドホック会議などに費やされた時間など、膨大な量のコラボレーションのシグナルを収集できなくてはなりません。これらすべてのデータをまとめることで、組織レベル、個人レベルの両方で、コラボレーションのパターンや行動に関する洞察を得ることができます。これらの洞察を組織のコンテキストや他の企業データと一緒に見る場合、アナリティクスは、仕事のストレスや感情的なウェルビーイングに関連するいくつかのポイントを解明し、非常に人間的なストーリーを伝えるのに役立つ可能性があります。

コラボレーションに関する一連の洞察は、次の2つのレベルで見る必要があります。

1) 必要な自己介入を行うために、個人が利用できる個人的な洞察。

2) ビジネスリーダーや人事リーダーが、組織の平均的なベースラインからの乖離を診断するのに役立つ集約された洞察。

 

個人:アナリティクスを使用し、(安全に)従業員の行動を評価
個人の洞察を可能にするツールの1つに、MicrosoftのMyAnalyticsがあります。このツールを使用すると、個人が自分自身のコラボレーション行動をより詳細に確認し、各就業時の作業や自分が実施した有意義な作業を、よりよく認識できるようになります。この分析と洞察は、最終的には各人が自分の役割に対してよりバランスのとれた行動を計画するのに役立ちます。この情報にアクセスできるのは、個々の従業員のみで、管理者や企業の他の権限を持つ人がアクセスすることはできません。

この仕組みを理解するために、「フォーカス」という項目が表示されているMyAnalyticsのダッシュボードのサンプルを以下に示します。これは、この人が、より意味のある作業を完了するために、作業を中断することなく連続した2時間の時間を充てることができることを示しています。

MyAnalyticsからのアドバイスや推奨事項には、他の方法では見逃してしまうようなパフォーマンス向上の行動につながるものもあります。例えば、個人のメールチェック頻度が慢性的に高すぎる場合、その習慣を変えることに取り組むことができます。

このような習慣は作業を中断させるものであり、生産性の低下につながります。(前述したように、作業の中断から戻るには平均23分を要します) MyAnalyticsを活用することで、個人が自己変革を計画し、集中できる時間をより多く見つけられるよう改善していくことができます。

組織:グループ分析と集約分析を活用し、従業員への指導の必要性を見極める
最新の職場データと分析ツールには、2つのタイプがあります。1つ目は、特にコラボレーション ツールの使用状況に焦点を当て、その使用状況と利用パターンをさらに表示するために使用できるメトリックをレポートする分析ツールです。2つ目は、チーム、ユニット、部門、機能グループ、さらに大規模な組織のコラボレーション行動パターンを集約して分析することを可能にするツールです。Microsoft Workplace Analytics (WpA) は、2つ目に該当するソリューションであり、包括的なコラボレーション行動を分析するワークベンチを提供します。

Workplace Analytics ワークベンチはさまざまなデータと分析を提供します。ここでは、その洞察の一部を説明するのに役立つ例を紹介します。

●「1週間あたりの総労働時間(Workweek span)」:
Workplace Analytics を電子メールやコラボレーションツールを含む一連の企業データに適用すると、企業内のユニットやグループ間で一週間の作業期間の範囲にどのようなものであったか明らかにすることができます。たとえば、マーケティング部門とオペレーション部門はどちらがより長時間働いたかとか、また、そのメンバーの平均稼働時間が週40時間であったかどうかを明らかにすることができます。マーケティング部門の勤務時間外の作業が多い場合は、それがマーケティング部門の業務の性質に起因するものなのか、それともその部門の上長によってできた仕事文化のような他の影響要因からくるものなのか、CHRO(最高人事責任者)は調査指示を出せるよう警告を表示すことができます。要因が後者である場合は、人事部が計画的に介入することで、マーケティング部門が週末に仕事をしないようにし、従業員の疲弊を防ぐことができます。

●「集中時間(Focus hours)」:
Workplace Analyticsは、チームが割り当てられたジョブタスクを完了するために、集中できる十分な時間が1日のなかにあるかどうかの洞察を提供することができます。また、ユニットの集中時間が不十分であると判明した場合は、まずユニット長が問題を診断し、それに応じてアクションを計画することが重要です。その結果、従業員の生産性が向上し、従業員の仕事上のストレスが軽減されます。このような指導の例として、チームが招待される会議の種類を詳しく調べ、チームの階層を増やすことで他部門とのコラボレーション量の分散に役立つかどうか再検討したりできます。

●「コラボレーションの過負荷(Collaboration overload)」:
Workplace Analyticsを活用し、コラボレーションの過負荷のパターンを明らかにすることができます。どのようなコラボレーションが特定のチームやユニットに大きな影響を与えているのかを理解することが重要です。たとえば、1対1のコラボレーションにおいて、インスタントメッセージやチャットを使用できるのにもかかわらず、チームが非常に多く電子メールを利用していることを特定することができます。そのような場合は、チームに対し、インスタントメッセージやチャット(Microsoft Teamsなど)の使用を促進することができます。また、Workplace Analyticsを活用することで、組織のベースラインを超えるチームのコラボレーション過負荷の増加を特定することにも役立ちます。ビジネス部門長は、コラボレーションインスタンスを詳細に調べ、ミーティングやその他のコラボレーションインスタンスの数と頻度を削減または分散する必要があるかどうかを判断することができます。

ワークプレイスアナリティクス:
情報により従業員のウェルビーイングを積極的に管理
新しい働き方にともない、個人レベル、チームレベル、組織レベルで大きな変化が起こり、それにより、集団および個人においてストレスを生み出します。そのストレスは、放っておくと増加してしまい、これらはすべてのウェルビーイングに深刻な悪影響を及ぼし、ひいては、組織のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。

ウェルビーイングを高め、人材とビジネスを守る
企業のリーダー(CEO、CIO、CHRO)は、新しい環境における戦略を再考し、各事業部門、スタッフ、プロセスに対して適切な指導を行なう必要があります。リーダーやマネージャーを導くことができる答えに到達させるために、意思決定者は、特に人々の対話とコラボレーションについてのデータと分析が必要となります。企業はツールとテクノロジーを活用し、適切なシグナルを取り込み、分析そして洞察をすることが必要です。それにより、ストレスの曲線を特定し平坦化するによって、マネージャーの指導・助言および、従業員のパフォーマンスを改善することができます。

 

著者

  Sangita Garg
Sangita Gargは、24年以上の経験を持ち、Microsoft BusinessUnitのWorkplaceAnalyticsの責任者です。彼女のキャリアの進歩において、彼女は製造現場の管理、ITシステムの開発、設計、アーキテクチャ、研究、革新など、さまざまな分野で挑戦的な役割を果たしました。
  Madhurya Bhavani
Madhuryaは、HRビジネスコンサルタントとして、多くのFortune500企業を含むいくつかの企業を支援した経験があります。彼女は、テクノロジーの移行と変革の最前線にいる企業向けの人材変革イニシアチブを主導するスペシャリストです。