ゼロタッチオペレーションを実現するためのアプローチ

White Paper

ゼロタッチオペレーションを実現するためのアプローチ

 

デジタルファーストの世界で進化するハイブリッドネットワークの運用

スマートシティ、コネクテッドファクトリー、自動運転車、ドローン配送などが実現する新しい時代に向けて、通信事業者(CSP)はシームレスで信頼性の高いネットワークを提供することが求められています。

変革への第一歩は、物理ネットワークと仮想ネットワークで構成されるハイブリッドネットワークを効果的に管理することです。しかし複雑なネットワークでは運用上の課題も多く発生します。問題を検出して素早く解決するためには、運用を自動化し、マシンファーストのアプローチをとることが重要です。

これは、通信事業者のクラウドネットワークへのシームレスな移行、ネットワーク機能仮想化 (NFV) やソフトウェア定義ネットワーク (SDN) などのテクノロジーの採用、ビッグデータに基づく分析やIoTシステムの導入など、複数のフェーズにまたがるプロセス変革が必要になるということです。

本稿では、通信事業者がリアクティブな従来型のネットワーク運用を変革し、リアルタイムで自動化されたアクションとコグニティブ・オーケストレーションを実装することで、ゼロタッチオペレーションを実現するという革新的なアプローチについて概説します。

従来型と次世代型の融合:ホリスティックな アプローチの必要性

これまで通信事業者はネットワークを断片的に管理してきました。そして通信ネットワークが急速に進化し、SDNやNFVなどの新しいアーキテクチャによりネットワークの機能がハードウェアからサービスの概念へと抽象化が行われました。

そうした中で、通信事業者は従来型のネットワークと仮想ネットワークの両方を管理するという負担に直面し、複雑さ、セキュリティ、リスキリングなどの多くの課題を持つようになりました。

2026年までに、35億の5 Gサブスクリプションが見込まれており、接続要件を満たすには仮想化が鍵となります。そして同時にさまざまなシステム、ツール、製品のデータを統合して、ネットワークとその運用をエンドツーエンドで分析・表示することが必要です。

ネットワークの運用、業務をサポートするツール群 、日常的なプロセスなどを自動化することは、サービス提供の迅速化、業務上の問題の予見とその解決、そしてコストの最適化に不可欠です。また、IoTやクラウドサービスの普及に伴い、ネットワーク回線を自動的に生成し不要な時にはサービスを終了するといったオンデマンドでリアルタイムにサービスを提供することも求められています。

テクノロジーに敏感な顧客は、透明性と即時対応も求めています。こうした複合的な課題に対しては、ハイブリッドネットワークを管理し、従来型のネットワークを進化させ、ホリスティックな アプローチでゼロタッチオペレーションを実現させることが不可欠です。

ゼロタッチオペレーションの実現にむけて

ゼロタッチオペレーション(ZTO) は、人が介在することなく、効果的に自己管理、修正、拡張、管理ができるネットワークを構築するための基本的な柱です。そして機械化されたネットワーク・オーケストレータによるシームレスなプロビジョニングとデプロビジョニング、物理ネットワークと仮想ネットワークの監視が不可欠です。

ZTOは、通信事業者が堅牢な業務遂行のための侵入防御システム (IPS) による監視、セキュリティツールの導入、インシデントのアラートの自動発生、そしてそれらを各システムに割り当てることを支援します。ZTOの主なメリットの1つは、すべての通信管理を直感的に処理し、すべてのネットワークイベントの記録を保持して、ダウンタイムを相互に関連づけて予測し、ネットワーク全体のパフォーマンス、品質、レポートを最適化できることです。さらにZTOは、ソフトウェアとファームウェアの自動インストールとネットワークのトラブルシューティングを行うだけでなく、インテリジェントなパッチ管理と、不測の事態に備えたスケジューリング、オンデマンドのバックアップとデータの保管を行うことができます。

ゼロタッチオペレーションを成功させるための4つのステージ

ZTOの実現には4つのステージがあります。これには、従来型から次世代型まで、複数のネットワークをエンドツーエンドで仮想化する必要があります。組織は進化の旅の出発前に、ネットワークを明確に分離し、ネットワーク内のエンティティの成熟度を特定して、出発点を確立する必要があります。
通信事業者は、仮想化の度合いと自動化の度合いをマッピングして、ネットワークの成熟度を把握できます。本アプローチは、ネットワークの仮想化レベルに焦点をあてています。これはオンデマンドデジタルサービスをリアルタイムで提供するための中核となるパラメータの一つだからです。オーケストレーションやAI/MLなどの他のパラメータも自動化のレベルに関係がありますが、仮想化は通信事業者が到達すべき自動化のレベルを理解するための基本的なパラメータです。

第1ステージ – 従来型
従来型とは、広範な物理ネットワークをもち、近い将来、仮想化の計画がない場合です。

従来のネットワークを使用する通信事業者は、コマンドライン・インターフェース(CLI)オートメーションやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)などのツールを使って、フルフィルメントやアシュアランスなどの手動プロセスを自動化することから始めるべきです。

こうした自動化の取り組みによって、ネットワークの運用コストが下がり、サービスを提供するための資金調達が可能になります。

第2ステージ – リアクティブ
リアクティブとは、大規模な物理ネットワークと、フルフィルメントやアシュアランスなどの高度な自動化プロセスを組み合わせたネットワークを指します。このタイプのネットワークは、数年前に行われたネットワーク投資の効果を最大化するように設計されています。しかし、要求に応じてオペレーションをスケールアップ・スケールダウンできるような柔軟性と汎用性がなく、オーケストレーターを使って複数の階層型サービスを提供できません。

通信事業者は、ネットワーク運用を次のレベルに引き上げるために、ネットワークのどの部分を仮想化できるのかを見極める必要があります。このタイプのネットワークではAIや機械学習に基づくインサイトを生成し、そのインサイトに基づいて自動化されたアクションを起こすことがよいでしょう。いくつかの多国籍通信会社は、ZTOの第2ステージの弊害を乗り切ろうと取り組んでいます。

第3ステージ – 発展
このタイプは、ネットワークの大部分は仮想化されているものの、優れたオーケストレータを持たないか、特定の物理ネットワークに依存しているために効率的に機能しないケースです。アクセスネットワークが完全に仮想化されていても、バックホールネットワークがまだ物理的であるため、エンドツーエンドのサービスが完全には自動化・オーケストレーションされず、仮想化の効果が限定的な可能性もあります。 発展的なネットワークを持つ通信事業者になるためのステップは、完全な仮想ネットワークに移行し、自動化とオーケストレーションを導入することです。そしてアジリティと自動化のメリットを完全に実現するために、エンドツーエンドで自動化する必要があります。機械学習とアナリティクスは、ネットワークの一部にしか適用できないため、こうしたシステムの価値を最大限に引き出すことはできません。

第4ステージ – 革新
このステージのネットワークは最も進化しており、高度な仮想化と自動化が特徴です。

Open API、ONAP、OPNFVなどのオーケストレーションエコシステムと統合可能な新しいオープンテクノロジーによって、大きなアドバンテージを獲得できます。

高度な仮想化と自動化の組み合わせにより、通信事業者はサービスをシームレスにオーケストレーションし、必要に応じてスケールアップ・スケールダウンできます。データの収集と分析が容易であるため、プロアクティブなネットワーク管理のためのインサイトが得られます。

このステージでは、顧客やサービスレイヤーとネットワークとの融合を把握するために、新しいテクノロジーに莫大な投資を行わなければなりません。また処方的アナリティクスとマシンインテリジェンス(MI)のアルゴリズムによって駆動するインテリジェントな運用が行われます。ネットワークコンポーネントは、必要に応じ動的に生成、停止が行われます。業界TOPの通信事業者がすでにこの改革派に移行していることは驚くべきことではありません。

5 G時代に向けたネットワーク運用の再活性化

業界で議論されている戦略のほとんどは改革派に関するものですが、通信事業者のうちステージ4:革新に該当するのは世界の15~20%にすぎません。前述のアプローチは、完全な物理ネットワークか部分的な仮想ネットワークかに関わらず、通信事業者のすべてのカテゴリーを含んでいます。通信事業者は、これらのカテゴリに基づいて自社のネットワークを評価し、ZTOの明確な戦略を策定する必要があります。しかし、現実には多くの通信事業者が依然として従来型の物理ネットワークに依存しており、ZTOへの移行は困難な状況にあります。
5 Gが通信業界を席巻する勢いの中、ZTOへの進化を迅速に、しかし段階的に進めていくことが生き残りの鍵です。つまり、現在のネットワークの成熟度に基づいて次のステップを特定し、ネットワークがステージ4:革新に到達するまで、後続のステージを繰り返しながら進めていくことが重要です。

※1 Ericsson Mobility Report 2020

 

著者

パレシュ・ジャイン
パレシュ・ジャインはシニアドメインコンサルタントであり、TCSのCommunications, Media and Information Services (CMI) ビジネスユニット内のネットワーク運用およびOSS製品グループを率いています。20年以上の経験を持ち、通信事業者の製品戦略を担当しています。専門分野は、サービスやネットワークのオーケストレーション、IoTデバイスの管理などです。インドのピラニにあるビルラ技術科学大学 (BITS)で、システムと情報に関する工学修士号を取得しています。

タルーン・ゴスワミ
タルーン・ゴスワミは、TCSのCommunications, Media and Information Services (CMI) ビジネスユニット内のネットワーク運用およびOSS製品グループの製品エンジニアリングリーダーです。

約18年の経験を持ち、ソリューションのロードマップの策定、通信事業向けの製品とソリューションのアーキテクチャの設計と構築を担当しています。専門分野は、ネットワークアシュアランス、サービスやネットワークのオーケストレーション、IoTデバイスの管理などです。

インドのピラニにあるビルラ技術科学大学 (BITS)で、ソフトウェアのエンジニアリングの修士号を取得しています。PSM認定アジャイルコーチでもあります。

監訳者

草柳 弘一
草柳 弘一は日本TCSのCommunications, Media, and Information Services (CMI) ビジネスユニットの本部長です。ITおよび通信業界で25年以上の経験を持ち、CMI業界向けビジネスの営業活動をリードします。

※掲載内容は2021年12月時点のものです

 

個別のご相談も承ります。お気軽にお問い合わせください。

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズは、 グローバルで業界トップクラスの実績、技術、規模を誇るタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)の技術や知見を用いて、 お客様のビジネス変革をお手伝いさせて頂きます。

TCSのテレコム・メディア向けソリューション