かたりす人

#1 変革の一歩を踏み出す

中村CDIOからの4つのヒント

 

 

 

「かたりす人(と)」と題したこちらの連載では、「人」にフォーカスして変革のきっかけを共有していきたいと思います。初回は日本TCS CDIOが登場です!

 


変革の旗振り役

こんにちは。私は日本TCSでCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)を担当している、中村です。本日は銀行員一家に生まれ伝統的な日本企業で育った忖度しまくりの生粋の日本人だった私が、グローバルな場でもまれ自己変革した経験を踏まえて、日本企業がCX(ここでは「Corporate Transformation」の意)すなわち事業変革をどう推進すべきか、堅苦しくなく語ってみたいと思います。

私はCDIOとしてBIU(ビジネスイノベーション統括本部)をリードしています。肩書と部署両方にイノベーションが入っている通り、一言で言うと日本のお客様のイノベーションの創出を、サービスデザイン・産官学連携・スタートアップや新しいデジタル技術の提供・イノベーションセンターの運営など日本企業に足りない部分を補う役割を果たしています。0を1にする。1を3にする。物事を生み出し、芽を出させるための役割を担っています。イノベーションという言葉のイメージから、新しいことをどんどん始める、変化を起こす、というところに目が向きがちで、「企業のトップの人たちが考えることだから自分には関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私自身は本当にイノベーションを達成するために必要なことは、トップのコミットメントと、そしてその企業や組織に関わる現場一人一人の腹落ちと言動により、同じ方向に変化を進めることだと思っています。

今回はあえて企業・組織の仕組みや体制の変革の話ではなく、個の変革の側面から私自身の話を紹介したいと思います。

まず冒頭で触れた通り、私は、銀行員一家に育ち、いわゆる典型的な日本人・日本企業のバックグラウンドを持っています。元来、人に喜んでもらうことに喜びを感じる性格でしたので、人の役に立つことをしたいという思いの実現のため、銀行でのキャリアをスタートしました。当時の銀行は日本的な文化や仕組みを色濃く残す組織でしたから、もしかすると「変革」とは真逆の位置にいた人間なのかもしれません。

そんな私がなぜ今「変革」の旗振り役として、お客様の変革をご支援する立場にいるのか。一言で言えば、自分の価値観を大きく揺さぶるような出会いや体験をし、それを日本の企業・組織、さらには日本全体にお伝えしたいと思ったからです。実体験を自分で咀嚼し理解して、行動に移すことを繰り返した結果、私の機軸は「変化・変革」を推進する側に変わってしまったのです。もっと厳密に言えば、私自身のコアは変わっていません。私自身の思考の幅が広がり、軸足の置き場と可動域が変化した、という感じでしょうか。

私にとって大きな転機となったのは、グローバルな環境で働く経験でした。典型的日本人の私のマインドセットを大きく変えた、30代のころのオーストラリア駐在および米系グローバル企業で経験した気付きをご紹介します。

 

What’s new?

欧米ではよく「What’s new?」と挨拶します。日本だったら同じ意味の挨拶をするときになんと言いますか?「お変わりありませんか?」と挨拶されるのではないでしょうか。ある時ふとこの大きな文化の違いに気づきました。日本の「お変わりありませんか?」には暗に「変わらないことは良いこと」というニュアンスが含まれているように感じられる。(もちろん健康な状態が続いているようでなにより、という意味があることは理解していますよ。)何気なく使う言葉だからこそ、日本人である私自身の根底にあるのは「変わらない状態を保持することが良い」ことであると自覚したのです。

確かに変わらないことが良い方向に動くこともあります。ですが、今までにないスピードで社会が変化していくのに合わせ、自分自身も変革していかなければならない時代になっているのは、今私のメッセージを読んでいただいているあなた自身が肌で感じていると思います。

 

プロフェッショナリズム

日本とオーストラリアの「プロ意識」には大きな差があることに気づかされた一言がありました。ある日、支社長(日本人)が自分の衣類をクリーニング屋に自分で出しに行った時のこと。戻ってきた支社長へ秘書さん(オーストラリア人)がこう言いました。「支社長、私がプロフェッショナルとして最も大事だと考えていることは、あなたの時間をいかにして1秒でも多く捻出できるかと言うことです。あなたにはその時間を使って経営者としてやるべきことに集中していただきたい。」

支社長が自分で衣類をクリーニングに出しに行っただけ、たったそれだけのことなのですが、それは支社長が時間を使うべきことではない、と秘書さんは断言したのです。果たすべき役割を徹底的に遂行するという秘書の「プロ意識」に触れ、自分の「プロフェッショナル」とその責任について再認識させられた経験でした。もちろんこういったプロ意識を持っているのは秘書さんだけではなく、あえて言わないだけで同僚も同じなのだと、どきっとしました。今や日本国内だろうが海外だろうが働く場所は関係ありません。一人一人がプロの世界。対等に仕事をし、時には戦っていくために、改めて自分自身の「プロフェッショナリズム」を認識しなければならないと思っています。

 

変革の一歩を踏み出す時に心がけること

こうやって「変革」の気付きを得てきた私ですが、日々経験と振り返りを繰り返し、行動を起こすことで変革を少しずつ実現してきました。とは言っても、じゃあ何をどうやって?とお思いの方も多いと思います。私の実体験から抽出したエッセンスを4つお伝えしてみたいと思います。

①    変化を受容すること

まずは変化している現状を認め、変化を受け入れることから始めるべきだと考えています。欧米型の変革はトップダウンで痛みを伴う変革推進型とも言える側面があると思いますが、日本で同じようにする必要はないと思っています。「お変わりありませんか?」の文化は、日本のいいところでもあるからです。ただ、時代は大きく変化しているし、物事を日本視点だけでなくグローバル視点で考えなければいけないことは明らかです。「変化しない」と「急激な変化」の間にあるのは「変化を受容する」ことだと考えています。これは企業だけでなく、個人にも当てはまると考えます。変化を受容することで、日本人らしいサステイナブルな変革の在り方を模索していけると思っています。

②    Speak up early and enough

直訳すれば「早めに話す・十分に話すこと」。まずは、自分が考えていることを周囲の人に伝えることから始めたらいいのではないでしょうか。自分がどんな人間で、今何を考えているか伝える。シンプルなようで、意外にできていない人もいるのではないでしょうか。実はこれ、「リーダーの思考をメンバーと共有しておかないとリスクにもなるのだぞ」と当時のボスから口酸っぱくいわれた思い出のフレーズでもあります。

リーダーからある日突然「新しいことをやるぞ!」と言われても、背景も何もわからない状況で、なぜ今これが必要なのか腹落ちしていなかったら心から協力しにくいですよね。リーダーですらそのような状況になるのです。何か起こる前に十分にチームメンバーと対話し、お互いの考えを共有しておくこと。信頼関係を築いておくこと。いざという時にフォローしあえる仲間を増やしておくこと。意思疎通の基本ではありますが、腹落ち、共感を得る事、この基本が大事なのだと常日頃感じています。

③    Do what I can control

このままではいけない、現状を変えなければ、という気付きは重要ですが、いきなり変革を巻き起こすことはできません。まずは自分ができる範囲のことをやる。自分の気付き・考えを行動に起こすことから始めましょう。例えば、何か上司に不満があったとする。愚痴を言うのはOKですが、言いっぱなしはだめです。今の私は、何か改善して欲しいことがあれば、上司であれ誰にでも、改善して欲しいことをすぐに伝えます。あなたのアクションが、周囲の行動を変えるきっかけになります。もちろん、伝え方・行動の起こし方は大事です。適切なアクションは周囲の人も意外と見ています。

④    「正しさ」とは何か

変化を受容し、コミュニケーションを十分取っていても、変革にはコンフリクトはつきものです。コンフリクトを起こさないように進めているつもりでも、どうしても避けられませんし、簡単な解決方法は今だに私も見つけられていません。それでも物事を進めるためには、正しいこと・正しい方向で継続することが最も大事だと考えています。ここでいう「正しさ」とは、個人のためではなく、お客様・会社・チームのためになることです。この視点を持っていれば、たとえコンフリクトが起きても、有意義な議論ができるはずです。この視点は絶対に欠かしてはならないと私は考えています。

 

変革のトリガー

ここまで私の実体験をお話してきましたが、こういう話をするとウチの社員からも「中村さんは良いですよね。私の環境ではそんな素敵な経験できません。」みたいな感想が出てくることがあります。私がお伝えしたいことの本質は、「一人一人が気付きをもとに一歩踏み出すこと」なんです。日本人のすごいところって、一度決めたら最後までやりきる世界一の実行力だと思います。これは世界に誇れる強みだと私は確信しています。ただし、走り始めるまでが難しい。生粋の日本人として0から1にすることの難しさは、私もよく理解しています。自分に関わる些細な変化ですら、大きな不安やリスクを感じると思います。ですが、目指すべき理想や想いがあるならまず始めてみることが重要です。

今回、この「かたりすと」で私が先陣を切って話をさせていただいた理由は、私が語ることで私の体験を追体験してあなた自身の気付きにしてほしいからです。実体験に勝るものはないかもしれません。ですが、何か変えたい・ヒントが欲しい、とお思いのあなたの背中を押すためのヒントはお伝えできると思っています。

また、私だけではなく、今後「かたりすと」では日本TCSの最前線をご紹介していく予定です。日本TCSおよびTCSグローバルがご支援しているお客様の変革はもちろんのこと、実は私たちも数年かけて、日本TCSという企業を、そして自分たち自身を大トランスフォーメーションさせてきたという事実があります。この「かたりすと」というプラットフォームを通じて、読者であるあなたに「変革のトリガー」をご提供していきたいと思っています。

今後の「かたりすと」にぜひご期待ください!

 

 

中村 哲也

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
専務・チーフデジタルイノベーションオフィサー(CDIO)

1988年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。国内外で営業や経営企画、システム導入、3行統合をはじめ幅広い業務に従事。2007年、GEジャパンに入社。主に金融機関とのパートナーシップ構築を図る金融法人部や大手日本企業との戦略的パートナーシップ構築を図る法人営業推進部で活躍。2012年から、日本におけるGEデジタルの立ち上げ・運営を主導。同社の常務執行役員を経て、2018年4月、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ専務・CDIOに就任し、デジタルトランスフォーメーション(DX)、新規事業開発、アライアンス、イノベーション、産官学連携などを担当するBIU(Business Innovation Unit)を立ち上げる。

 

 

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