イノベーションの港から

#3 小さく始めて大きな変革に

自動走行機能を実装したテレプレゼンスロボットのPoC

 

Pace Portが価値を提供し続けるために

坂東:みなさんこんにちは。今回はPace Port Tokyoで新たに自動走行機能を実装したテレプレゼンスロボットのPoC(概念実証)について「かたり」ます。まずは今回の内容と背景について簡単にご紹介いたします。

滝沢:こんにちは。滝沢です。Pace Port Tokyoはお客さまに物理的にお越しいただき各モジュールの機能を体験いただく事を価値の一つとして作られた場ですが、コロナ禍において、Pace Port Tokyoの取り組み内容も大幅に見直しを迫られました。これは、Pace Portのみならず体験を提供する多くの場で認識された課題ではないでしょうか。どのような状況下でも、Pace Port Tokyoが価値をご提供し続けられるよう、バーチャルでのコミュニケーションツールの活用や、物理的な接触を削減したリモートガイドなどの案を出し合いながら思考錯誤してきました。今回のテレプレゼンスロボットのPoCはそのうちの一つに当たり、TCSリサーチ部門のコグニティブ・ロボティクス研究チームの協力を得て実現したものです。

坂東:現在グローバル全体で5か所の TCS Pace Portが存在しており、コロナ禍でもその歩みを止めず様々な価値をご提供していますね。

滝沢:日本同様、各地域のPace Portもロックダウンなどの様々な制約のもと、お客さまへどのようにして継続的に価値ある体験をご提供できるか模索が続いていました。例えば、毎年行われているTCS Innovation ForumをPace Portがキュレーションしオンラインで北米、欧州、日本向けに開催したり、Pace Port New Yorkでは、360°カメラ用いたバーチャルツアーを質の高いレベルで作りこみお客さまに継続的に体験を提供したりしています。Pace Port Tokyoでは、既にリモートでロボットを操作しお客さまにツアーいただく体験を提供していますが、そこへさらに、人が操作しなくてもロボットが一緒に移動してご案内し、人の代わりにロボットが各スペースを音声で説明するツアー体験などを検討していました。今回のPoCでは、そういった検討も踏まえながら「テレプレゼンス*1ロボット」を活用し、短期間で自律型ロボットのプロトタイプを作成する試みをスタートしました。

*1:リモートコントロールとロボット技術を組み合わせて人が遠方からある場所で存在(プレゼンス)させることができる技術

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Q1 FY2017 Results Highlights Earnings Press Conference
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動画:自動走行機能を実装したテレプレゼンスロボットの走行実験

 

体験を提供するための手段

坂東:本PoCは、Pace Portチームだけでなくラピッド開発チームとの協働により開始されました。お客さまをエスコートし、体験を提供できる自律型ロボットが最終目標ではありますが、短期間でのスピード感のあるPoCを意識して開発がスタートしました。まずは実際に実装した内容がどういうものか、ラピッド開発チームのアーキテクトであるNandhaさんに解説していただきましょう。

Nandha:こんにちは。ラピッド開発チームのアーキテクトNandhaです。今回のPoCで新たに実装した内容は、半自律的な走行機能と経路探索機能です。最終目標は「お客さまをエスコートし、体験を提供できる自律型ロボット」ということでしたが、今回の実装により、ロボットがお客さまと一緒に移動しながら、双方向のビデオ会話ができるようになりました。このロボットを移動させるには2つの方法があり、1)手動でコントロールする方法と、今回新たに実装した 2)地図上のゴールポイントを指定して自動で動かす方法です。今回は2の方法を採用しました。

1)の方法では、誰かがロボットを遠隔操作して移動させて、さらにロボットを介してビデオ会話する、という2つのステップが必要でしたが、2)の方法では、ロボットが自動で移動することで遠隔操作は不要になりますので、いままでよりお互い会話に集中できるようになるでしょう。

坂東:今回はTCSの特許ソリューションを応用してPoCが進められましたが、具体的にどのような技術が採用されたのですか?

Nandha:まず、PoC実装にあたっては専門知識を持つTCSリサーチグループの協力を得ています。TCSリサーチ部門のコグニティブ・ロボティクス研究チームと呼ばれるこの組織は、様々な業界におけるテレプレゼンス・オペレーションの分野における、各技術の研究開発を行っています。そして今回のPoC実装には、リサーチラボの開発資産とフレームワークを用いました。この開発資産とフレームワークには、エッジセントリックな通信プロトコルや軽量データ通信、SLAM (Simultaneous Localization and Mapping:自己の位置推定と周辺の地図作成を同時に行う技術)を用いた自動走行、音声を用いた対話のやり取り、話者の位置特定などの出願特許が含まれています。今後このフレームワークに、音声によるナビゲーション機能や、障害物を検出する機能を搭載していく予定です。TCSが研究開発している分野は幅広く、グローバルでの稼働実績がある技術も多くあります。エンジニアが、日本を含め世界中のどこにいてもTCSが開発した技術をスムーズに用いることができるのは、当社の大きなアドバンテージだと考えています。

坂東:スピード感のあるアジャイルな開発ということはTCSでは常日頃意識されていますが、開発にはどのくらいの時間を要したのでしょうか?

Nandha:PoCの開発期間については、トータル2ヶ月程です。半自律型の走行機能をサンドボックス環境に組み込むことと、各機能がビデオ会話機能と同期して動作するように、メッセージパッシングを行う低遅延の通信プロトコルを採用することが大きな課題でしたが、世界中のTCSにあるリサーチ&イノベーション部門のシナジーによりスムーズな開発が可能になったと思います。

テレプレゼンス技術を活用した体験の可能性

坂東:今回のPoCでは理想の途中段階までの機能実装ということでしたが、今後の改善方法や可能性についてどのようなことが見えてきたでしょうか。

滝沢:理想の姿に近づけるという観点からは、センサーとの組み合わせで人や障害物を察知して、臨機応変に避けたり、完全自走するためにドアも自動で開閉したりという点があると思います。これはテレプレゼンスロボットとしての機能だけではなく、IoTの技術などを組み合せることで実際の「体験」に近づきそうです。ビデオ会話やツアー用だけではなく、AIを搭載して自動応答の音声会話やテキストチャット、認知能力などの機能も付加できるとぐっと幅が広がりそうです。

このPoCの結果をもとに、引き続きお客さまが実現したいことに役立てていければと考えています。既に需要のあるユースケースとしては、商業施設でお客さまがお求めの商品の場所まで同行する、レストランやホテルでのお出迎えや席・お部屋への案内、病院での窓口や診察室の案内など、使用可能な場所は多岐にわたります。特にコロナ禍においては接触機会をなるべく減らすという意味でも活躍できる場面は増えたのではないでしょうか。

ユースケースのイメージ Photos by Getty

坂東:実際にお客さまにお使いいただくシーンをより具体的にしていくことで、求められる機能を必要に応じて付加していき、役に立つコミュニケーションツールとして成長していくこともできそうです。そのためにはお客さまの多用なニーズに応える必要がありますが、インドの研究所ではどのような研究開発が進んでいるのでしょうか?

Nandha:このコグニティブ・ロボティクス研究チームの主な目的は、より高いレベルの認知能力を持つロボットを構築し、未知の環境を理解し、人間と対話し、言語やジェスチャーを通じて人間の指示を理解し、インテリジェントに物体を操作できるようにすることです。我々は、企業、教育、ヘルスケアなどの様々なアプリケーションで使用できるように、テレプレゼンスロボットに認知能力を構築しています。コグニティブ・ロボティクス研究チームは、スマートオペレーションのための特許技術も開発しています。例えば、最初は整理されていない状態の部屋の家具をロボットが整理する技術です。最終的に目指す配置は、イメージで与えられます。これは、掃除や家具の配置換えなど、さまざまな用途に応用できます。今後実用化されたらぜひ日本のみなさんにもご活用いただきたいですね。

小さく始めて大きな変革に

坂東:今回はスピード重視のPoCおよびプロトタイプ開発を意識しながら、テレプレゼンスロボットや自律型ロボットの可能性について探ってみました。デジタルトランスフォーメーションを目指して新たなサービスを作るための、小さな、しかし重要な一歩だと認識しています。

滝沢:今回のPoCを通じて改めて感じたことは、大きな変革を実現するためには、以下のようなサイクルをアジャイルに回していく取り組みが必要だということです。

1.         ビジネスからシステムまで、多様な専門性を持つ人材が組む

2.         本当に達成すべき目標や目的を抽出・定義・デザイン(サービスデザイン)

3.         そのサービスを簡易的に作って検証する(PoC・プロトタイプ)

4.         お客さまが実際に使える形にしてお届けする

坂東:小さく始めて大きくするという点はまさにアジャイル、という進め方だったように思います。変革のスピードが加速し続ける中、そのはじめの一歩がなかなか踏み出せないという課題を抱えていらっしゃる企業様のお話も多く伺いますが、今回はPace Port自身がそのはじめの一歩の踏み出し方を自ら検証できたと感じています。

滝沢:今回はテレプレゼンスロボットや自律型ロボットのソリューションをテーマに取り組みましたが、Pace Portを経由して、目的の設定、サービスデザイン、プロトタイプ化、テスト、本番化までのステップが全て遂行できることにより、迅速に戦略やサービスの市場投入ができる利点は大きく、お客さまにももっと知っていただきたいです。お客さまの課題に対し包括的に対応するため、Pace Portとサービスデザイン、そしてラピッド開発のメンバー、エンジニア群が一緒に取り組んでいますので、はじめの一歩を踏み出すためにぜひご活用いただければ幸いです。

 

▶今回のかたりす人(と)

Nandhakumar K

ビジネスイノベーション統括本部

Architect

滝沢 幸子

ビジネスイノベーション統括本部

TCS Pace Port Tokyo Head

坂東竜二

ビジネスイノベーション統括本部

リサーチ&イノベーション

 

※掲載内容は、2021年6月18日公開時点の情報です。(AM)

 

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