「目的志向」の成長のための3つのフェーズ

THE THREE HORIZONS TO PURPOSE-LED GROWTH

「目的志向」の成長のための3つのフェーズ

 

目的は組織の存在意義を表します。企業によっては、目的を前面に打ち出すところもあれば、対外的には出さなくても、目的を確固たる軸として持っている企業もあります。2020年のパンデミックを機に、自社の目的に立ち返る動きが高まっています。これは、企業の成長・拡大といった経済面のみならず、存在意義そのものを問うものです。例えば、より健全なコミュニティの必要性、持続可能でインクルーシブ(包摂的)な経済成長、地球環境や将来世代の育成、個人の選択と管理権限の強化、経済面・環境面での危機に対する回復力といったことが、議論されています。

今日、ミッションステートメントとして表される企業の「目的」は、単なるキャッチフレーズではなく、経営やビジネスモデルそのものに組み込まれています。例えば、Bank of America社では、顧客とのあらゆる接点を通じて、一人ひとりの経済状況の改善に努めています。Vitality社は、今や医療保険会社として万が一のリスクを保証するだけでなく、加入者の健康増進のサポーターとしての役割も担っています。Damen Shipyards社は、造船会社にとどまらず、海洋ソリューション・プロバイダーとして、そのポジションを変えています。AT&T社の目的は、「つなげる」こと――つまり人々を、「人」、生きるのに必要な「もの」、ニュースや体験といった「情報・こと」とつなげること――です。エネルギー企業のTotal(トタル)社は、燃料を生産し販売するだけでなく、信頼性の高いクリーンなエネルギーを求めやすい価格で提供する、エネルギーの大手企業になることを目指しています。こうした企業は、その目的実現に向けて、デジタル技術を駆使したビジネス変革プログラムに取り組んでいます。

デジタル変革の最初の波は、企業が隣接する産業でも価値を創出すべく水平的に拡大し、産業界の境目が曖昧になる中で起こりました。こうした変化がパンデミックにより加速、成熟するにつれて、企業の境界までもが薄れています。企業は目的を軸に構築されたパートナーエコシステムに価値を見出し、また、そこから価値を引き出すべく、より風通しのよい組織へと変化しています。

「目的志向」の成長 ~3つのフェーズ~

デジタルトランスフォーメーション(DX)がもたらすビジネスの変化は、次の3つのフェーズで実現するといえます。

デジタルコアの構築

最初のフェーズは、基盤を築くことです。一元化されたデジタルファブリックとしてクラウド上にデジタルコアを構築することにより、組織がさまざまなリソースにアクセスする第一歩になります。これにより、レジリエンス(堅牢性)や適応力の強化、運用効率の向上も実現します。企業はこのフェーズで、クラウド、IoT、データアナリティクス、アジャイルやAIといった技術のいずれからでも始めることができます。しかし、どの技術を採用するにせよ、基盤そのものはこれら全ての組み合わせによる相乗効果によって、より強固なものになります。企業がここで取り組む課題には、次のようなものがあります。例えば、「従業員に合ったコラボレーションプラットフォームを持っているか?」「クラウド環境は整っているか?」「物理的な資産がネットワークにつながり、取得したデータに基づいて運用されているのか?」「アプリケーション環境はどれくらい堅牢でアジャイルか?」「システムやインフラの使いやすさとセキュリティ上の安全性は?」といった課題です。

ビジネスモデルの変革

優れたデジタルコアとケイパビリティが確立、機能し始めると、第二のフェーズ、つまりビジネスプロセスやビジネスモデルの変革への道が開かれます。デジタル技術を組み合わせることで、コネクテッドでパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンス(CX)を生み出すことができます。そしてそれが、ビジネスモデルの変革への礎となるのです。この段階では、イノベーションと業界内外からのベストプラクティスを事業運営モデルに取り込むことで大きく加速します。例えば、CXにおいては小売業界が注力し、大きく投資してきましたが、現在ではその知見が金融、製造、公共事業といった他の業界でも活用されています。また同様に、医療などの規制の多い業界もまた、金融業界のベストプラクティスを参考にすることができます。

目的主体のエコシステムを軸とした変革と成長

第三のフェーズはさらに高度な変革で、よりチャレンジングです。これは、事業運営モデルにエコシステムを取り入れることで、業界構造の変革を「目的志向」で促すものです。持続可能なビジネスは、個々の商品やソリューションを中心としたものから、エンドユーザーの包括的な目的を叶えるものにシフトしています。それを実現するには、パートナーエコシステムというプラットフォームを通じて、競合企業や他業界の企業、行政、学術界、スタートアップなどともオープンに連携することです。こうしたプラットフォームは、バリューチェーン全体の情報をデジタル化して共有することで仲介を省くとともに、透明性を高めて業界・分野横断的なイノベーションを促進します。
この第三のフェーズを進めていくことで、自社の事業のみならず、エコシステム内の他ビジネスにとっても飛躍的な価値をもたらします。集結した知見を駆使した普遍的な価値創造と、エコシステム内での投資効果の共有がこのフェーズの特徴といえます。

災害や疾病などの有事の際には、いや応なしに事業計画や将来像が前提から覆されます。そして、2020年のパンデミックから得た大きな教訓は、ますますボーダーレス化する世界において、目的こそが私たちを一つにまとめるものだということです。リーダーには、継続的なビジネス価値を創出するために、「目的志向」の成長への長期的なロードマップを策定することが求められているのです。