イベント開催レポート
AI Studioのツアーでは、AI関連技術に精通した日本TCSのエキスパートが最新のAIツールのデモを実施し、最新のユースケースやグローバルの導入事例に加え、日本TCSも参加する三菱CC研究会で行われた研究成果をご紹介しました。
CACTUSは、TCSのAIナレッジを集約した専門組織「AI CoE」の日本チームが開発した日本企業に最適化したユースケースの統合プラットフォームです。お客さまはCACTUS内に集められたユースケースを、自社のビジネスにお使いいただくこともできます。これはスクラッチ開発より迅速で、SaaS製品より柔軟なAI製品の導入につながります。
例えば、人事部門向けの人材プロファイル選考を想定したユースケースでは、職務経歴書を読み込ませて条件を指定するだけで、AIによる評価システムが的確な人材をスクリーニングします。「経験3年以上のAIエンジニアが欲しい」と入力し、ピックアップする人数を指定して、重視するポイントを「技術力」「業界知識」「ソフトスキル」などと選択すると、候補者リストをマッチング率と共に表示します。
ソフトウェア開発のユースケースでは、要件定義書の作成から仕様書や設計書への落とし込み、プログラムコードの生成、テストケースの生成までをAIが支援します。IT部門の担当者が多く参加したデモでは、特にソフトウェア開発のユースケースに大きな関心が寄せられていました。
TCS AI WisdomNextは、TCSのグローバルなユースケースを集めたプラットフォームです。日本で開発したCACTUSとの違いとして、グローバルで開発したWisdomNextでは、世界中でTCSが実現してきたユースケースを3,000以上網羅しており、より多くの業界や業務のユースケースを確認いただけます。
また、用途に応じて生成AIの大規模言語モデル(LLM)の主要プロバイダーを比較・検証できます。通常はGoogle Cloud、Microsoft Azure、Amazon Web Servicesのそれぞれのクラウドで実行環境を構築し、その上で生成AIの出力結果や費用を比較検証する必要があります。しかしTCS AI WisdomNextでは、入力したプロンプトに対するクエリ数(回答量)やコストを同一プラットフォーム上で比較しながら、最適なAIモデルを選定することができます。
保険業界のデモでは、がん(癌)をテーマとして生成AIに質問をします。質問に対する回答の内容や、質問と回答を合わせてかかる費用をそれぞれのモデルやクラウドで比較し、AIモデル選定の初期判断に活用できることを紹介しました。
2024年度の三菱CC研究会では、生成AIを活用したユースケース探索についての研究が行われました。体験ツアーのデモでは、その研究成果として、「ユーザが入力した食材を使ったレシピ提案」「音楽生成」、現在AI CoE内で技術検証している「画像検索」の3つを紹介しました。
「ユーザが入力した食材を使ったレシピ提案」は、生成AIに「トマト、ニンジン、ナス」などの食材をテキスト入力すると、サラダやポタージュスープなどの完成イメージ画像と共に、必要な材料やレシピが提示されます。また、雰囲気にあったBGMを作る「音楽生成」のデモでは、提案したレシピに合わせたBGMを自動生成して再生しました。
「画像検索」は、Microsoft SharePoint上のドキュメントやPDFファイルに埋め込まれた画像を、指定したキーワードに合わせて検索するものです。画像から画像を検索することも可能で、画像の一部から画像全体を対象に検索することもできます。この手法を活用すると、例えば工場で部品からマニュアルを探したり、画像を基に設計図を探したりするなど、オンプレミス環境での検索が必要な業務現場への展開を見込んでいます。
Q. AI Studioの目的は、研究開発(R&D)か、それともコンサルテーションのためのハンズオンでしょうか。
A. 両方の目的があり、グローバルのR&I(リサーチ&イノベーション)チームとやり取りしながら、日本市場に適したテーマを選択しています。
Q. R&Dやデモの開発のやめ時や続けるという判断はどのように行っていますか?
A.まずはやりたいことに対して、適切なAIモデルの選定と限界を確認します。もし限界がモデルに起因し、今後よいモデルが世の中に出てくることで改善できることであれば、いったん開発を中断(凍結)します。モデル以外が限界の要因になっている場合は、その要因の解決に投資(開発続行)します。また、新しいモデルが出てくるごとに、中断している作業に対して適用可能かを簡易判断します。そのモデルを使うことで精度向上が見込まれる場合は、検証や開発再開とします。そのため、凍結はありますが、完全に手を引くことはほぼありません。
三澤 瑠花
AIセンターオブエクセレンス本部 AIラボヘッド
國澤 龍之介
AIセンターオブエクセレンス本部 AIラボ データサイエンティスト
神田 瑛美理
AIセンターオブエクセレンス本部 AI Studio AIアナリスト
※ 掲載内容は2025年3月時点のものです。
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