損害保険ジャパン日本興亜株式会社
合併に伴うシステム統合プロジェクト
新会社発足に向けた大規模システム統合プロジェクトを完遂
プロフィール
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損害保険ジャパン日本興亜株式会社 創業:1888年 本社所在地:東京都新宿区 事業内容:損害保険事業 http://www.sjnk.co.jp/ |
2014年9月、旧・損害保険ジャパン様と旧・日本興亜損保様の合併により誕生した損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、SJNK)様。国内最大級の損害保険会社として、お客様の安心・安全・健康を支援する先進的なサービスを提供しています。日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(以下、日本TCS)は、合併に伴うシステム統合プロジェクトに参画、保険金サービスの自動車分野のシステム開発をご支援しました。
2014年9月、旧・損害保険ジャパンと旧・日本興亜損保の合併により、損害保険会社単体としては、国内最大級となるSJNK様が誕生しました。SJNK様では、規模だけでなくサービス品質でも業界をリードし、トップレベルの事業効率と収益性を安定的に維持するとともに、お客様の安心・安全・健康を支援する先進的なサービスを提供することで、真のサービス産業に進化していくことを目指しています。また、これらを通じて「世界で伍していく保険会社」を、目指す企業像として掲げています。
この方針の下、2社の合併によるシナジーを最大化し、真のサービス産業にふさわしい情報システムの構築を目指して、2012年2月にシステム統合プロジェクトがスタート。同年3月に合併が正式に決定し、6月にはシステム統合計画が策定され、8月から要件定義に入りました。
システム統合に当たっては、旧・損害保険ジャパン様のシステムを新会社システムとし、損害保険は1年契約が主となることから、旧・日本興亜損保様の契約が満期を迎えるごとに新会社システムに移行する『満期移行方式』(図参照)が採用されました。
「今回のシステム統合においては、両社での重複を徹底的に排除するという統合方針が打ち出されました。今まであったから今後も必要という考え方ではなく、本当にそのサービスやシステムが新会社システムに必要か、一つ一つ検証し、議論しながら進めました」
こうプロジェクトスタート当時を振り返るのは、SJNKグループのシステム開発・運用を担う損保ジャパン日本興亜システムズ(以下、SJNKシステムズ)様の損保システム第二本部 保険金サービスグループ部長の瀬﨑太郎様。瀬﨑様は、保険金サービスのシステム統合を統括するプロジェクトリーダーとして、両社の経営層やユーザー部門、社内エンドユーザー、代理店、さらに他のプロジェクトといった多くの利害関係者間の意見調整や、数多くのパートナー企業をまとめ、プロジェクトをけん引されました。保険金サービスとは、不幸にして事故に遭い、自動車が壊れたり、家が壊れたりされたお客様に保険金をお支払いするものです。保険金の支払いが1日たりとも滞るようなことがあれば、お客様に多大なご迷惑をお掛けすることはもちろん、SJNK様の経営にも大きな影響を与えかねない非常に重要なシステムです。
日本TCSは、この保険金サービスの自動車分野のシステム統合をご支援しました。
日本TCSは前身のアイ・ティ・フロンティアの時代から、旧・損害保険ジャパン様の自動車保険に関わるシステムの保守・維持管理を長年にわたりご支援してきました。この自動車分野の保険金システムに対する長年の実績と知見を評価いただき、今回のシステム統合プロジェクトに参画させていただくこととなりました。瀬﨑様は、「非常に要求レベルの高いシステムだけに、現場の皆さんの実績・知見はもちろんのこと、細かい技術的な課題でも会社全体で組織的に対応してくれる安心感が大きな決め手になりました」と、日本TCSを選んでいただいたポイントを話します。
こうして2014年9月の新会社発足に向けて、本格的に動き始めたシステム統合プロジェクト。最終的にプロジェクト全体で、開発期間約2年2カ月、総工数約4万5,000人月にも及んだ超大規模プロジェクトを支えたのは、SJNK様のプロジェクト管理体制です。統括プロジェクトマネージャーの下に核となる全体PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)を設置し、ここで全体の方針や計画を策定。そして全体PMOの下に、実際に作業を担う七つのプロジェクトと39のサブプロジェクトが置かれました。
これに加えて、プロジェクト間の整合性を確保し、全体を強力に推進するための横串組織も設けられました。また、プロジェクト全体の品質管理を担う品質管理チームと、プロジェクト期間中の宿泊施設や食事の手配などのファシリティ・マネジメントを担うPSO(プロジェクト・サポート・オフィス)も設置されました。
瀬﨑様が、保険金サービスのプロジェクト推進に当たり特に注力されたのが、数多くのパートナー企業の思いをいかに一つにするかだったといいます。「これだけの大規模プロジェクトは、決して私たちの力だけで成し遂げることはできません。社員とか、パートナー企業ということではなく、プロジェクト完遂のために何をすればいいのか、どうすればいいのかを日々議論し、共有することで、同じ目標に向かって進んでいくことができました。時には困難に直面することもありましたが、思いを一つにできたからこそ乗り越えることができたのだと思います」と振り返ります。
もう一つ瀬﨑様が心掛けられたのが、常に先を見て取り組むということ。「3カ月先を見ながら、3カ月後に問題が発生する可能性がわずかでもあれば、先送りにせずに、パートナー企業の皆さんと徹底的に議論しました」。こうした瀬﨑様のマネジメントにより、保険金サービスプロジェクトはリリースに向け着々と進んでいきました。
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今回のシステム統合プロジェクトは、二段階方式のリリースが採用され、2014年4月14日に新会社システムを、そして9月1日に合併日対応のリリースが決まりました。そして、リリースに向けて最大の山場となったのが、システム移行リハーサルでした。システム移行がうまくいかなければ、新会社のスタートに大きな影響が出てしまいます。そこで、プロジェクト全体としては既存システムを全面停止させるリハーサルを含め、計7回ものリハーサルが実施されました。
保険金サービスシステムでは、2月に1回、3月に2回のリハーサルが行われ、しかも本番と同じ環境でリハーサルを実施するために、既存システムを全面的に停止させての実施となりました。既存システムを全面停止してのリハーサルは、終了後にすべてを完全に元の状態に戻さなければなりません。この復旧作業がうまくいかなければ、保険金支払いなどの日常業務に大きな支障が発生してしまうことから、瀬﨑様は大きなプレッシャーを感じながら臨んだといいます。
「リハーサルを予定通り行うためには、2013年中に全ての開発が終了している必要がありました。そこに向かっての追い込みは、本当に大変でしたが、パートナー企業の皆さんの多大なご協力もあり、予定通りやり切ることができました。また、リハーサルを無事終えることができた時、システム統合に向けて確かな手応えを感じました」
そして2014年9月1日、移行リハーサルの成果もあり、SJNK様の情報システムは大きな障害もなくリリースされました。プロジェクトを通じての日本TCSの取り組みについて瀬﨑様は 、「組織全体でパフォーマンスを発揮しようという姿勢は、本当に素晴らしいと感じました。プロジェクトが難しい局面を迎えた時、何としてもプロジェクトを成功に導びこうと、日本TCSの経営陣までも社内で議論を重ねていただき、非常に心強く思いました」と評価します。今後は、タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)のグローバルな実績・知見に基づく提案に大いに期待しているといいます。
「合併のメリットをお客様である契約者の皆様にも感じていただくために、情報システムができることを追求していきたいと思っています。加えて、SJNKの社員が今以上に効率的に業務を行えるように、ユーザビリティの向上などにも取り組んでいきます。それによって生まれる時間を、お客様のために使うことでサービス品質の向上につなげていくこともできると信じています。日本TCSには、これらを実現するための積極的な提案で、私たちにどんどん気付きを提供してほしい。そして、SJNKの新たな姿を一緒につくっていってもらいたいと思います」
日本TCSでは、他業界の先進事例や最先端の技術などグローバルなネットワークを生かし、真のサービス産業への進化を目指すSJNK様を今後もご支援していきます。
今回の合併に伴うシステム統合プロジェクトにおいて、日本TCSがご支援したのは、自動車分野の保険金サービスシステムに関するオンラインシステムの事故受付、進捗管理、損害認定(物損、人損)およびこれらに付随するバッチ処理。このシステムは、業界屈指の事故対応システムとして、非常に高く評価されているものです。
企業の合併という、スケジュールの遅滞が決して許されることのない中でプロジェクトを円滑に進めるために、プロジェクトメンバーの選定に当たっては、SJNK様に関する業務経験があり、お客様の業務知識や業界に関する知見が豊富な社員を優先的にアサインしました。これによって導入教育などにかかる業務量を極力抑え、プロジェクトを効率的に進められる体制づくりを行いました。また、経験のないメンバーに対しては、経験者が事前に情報をインプットし、スムーズにプロジェクトに携われるように努めました。
さらに管理体制については、事故受付、進捗管理、損害認定(物損、人損)のそれぞれをチームとして編成し、その中にリーダークラスの人材を配置し、リーダー同士のコミュニケーションを密にすることで、情報を共有し、業務を円滑に進められるように工夫しました。内部結合テストのピーク時などは、毎日進捗会議を実施し、加えてSJNKシステムズ様との進捗会議も同様のペースで行われました。
日本TCSの社員が常駐していたプロジェクトルームには「絶対完遂」との目標が掲げられ、私たちプロジェクトメンバーもその目標の下、一丸となって取り組みました。もちろんスケジュール的に非常に厳しい時期もありましたが、メンバーがモチベーションを高く持ち続けることができたのは、統合に懸けるSJNK様、SJNKシステムズ様の経営陣の思いが私たちにも伝わってきたからです。当社の経営陣を含め、パートナー企業全社の経営陣を集めての会議を定期的に開催するなど、思いを共有する場が数多く設定され、そこでの内容が私たちプロジェクトメンバーにもきちんと伝えられました。お客様の経営陣から直接メッセージが届いたことは、今も忘れられないほど印象的でした。
保険金サービスシステムのプロジェクトにおいて、最も緊張して臨んだのがシステム移行のリハーサルでした。本番稼働後のトラブルを最小限に抑えるために、SJNK様では本番とまったく同じ環境でリハーサルを実施するとの方針が打ち出されました。土日を使って稼働中のシステムを完全に停止して行うということで、リハーサルそのものはもちろん、週が明けた営業日にはすべての業務が問題なく行えるようにしなければなりませんでした。それだけに考慮すべきポイントが非常に多く、通常業務へのインパクトも含めて大きなプレッシャーの中で取り組んだリハーサルは、日本TCSのメンバーにとって貴重な経験となりました。
こうした経験を生かし、引き続きSJNK様のお役に立てるようご支援させていただきたいと考えています。すでに統合プロジェクトを経験した当社社員がほかの分野でお手伝いさせていただくなど、お客様から信頼していただけるエリアを少しずつ広げることにつながっています。
また、TCSは米国の損害保険会社のアウトソースを一括してお引き受けするなど、グローバルでもこの分野の豊富な知見があります。こうした知見と実績を生かして、SJNK様にとって有意義な情報を積極的に発信し、これからもお客様に寄り添った最善のパートナーとしての関係を続けられるよう努力していきます。
※掲載内容は2015年8月時点のものです