ITインフラストラクチャーサービスについて
高品質、コスト最適化、グローバルガバナンスの確立、更にはシステムの拡張性も備えた持続可能な次世代IT運用の実現をITインフラストラクチャーサービスがお手伝い致します。
グローバル化やAI活用が進む中、IT運用は単なる保守・運用ではなく、クラウド、データ、AIを活用した事業変革を支える基盤へと役割を広げています。
しかし多くの企業では、障害対応や運用維持、ベンダー管理、老朽化したシステムへの対応に追われ、将来に向けた基盤の見直しに十分なリソースを割けていません。変革を阻んでいるのはIT部門そのものではなく、IT部門が本来担うべき変革推進の役割に踏み出せない構造です。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社(日本TCS)のITインフラストラクチャーサービス部門を統括する佐藤 隆が、企業のIT運用に潜む構造的な課題と、その突破口について解説します。
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社
常務執行役員
ITインフラストラクチャーサービス統括本部長
佐藤 隆(さとう たかし)
多くの日本企業で共通しているのは、IT運用を変えたいと考えながらも、日々の運用負荷によって変革に着手できないという状況です。経営層・現場の双方で危機感が共有されていても、障害対応や運用維持、委託先管理に追われ、基盤の見直しや将来の投資にまで手が回らないケースが少なくありません。この状態が続けば、企業の変革は進まず、競争力の差は着実に広がっていきます。
背景には、主に次の3つの構造的要因があります。
特に目立つのが、運用の用途ごとにベンダーを分けて委託した結果、ベンダー管理そのものに社内の工数を使い切ってしまう状態です。基盤の見直しや将来の投資に向けた準備に時間を割けず、限界を感じて当社へ相談に来る企業も増えています。
複数ベンダーへの委託は、もともとリスクの分散や専門性の確保を目的としたものです。しかし、委託先が増えるほど体制が複雑になり、システム全体の状態、責任分担、コスト構造、ナレッジの所在が見えにくくなります。
この結果、複数ベンダーで構築したシステムをプライマリーベンダーが統括する体制から、企業側が管理レイヤーを担う体制へ移行しても、現場を把握するベンダーへの依存は残りがちです。実務はベンダーに依存したまま、管理コストだけが企業側にのしかかる構造になっているのです。
したがって重要なのは、委託先の数を単純に減らすことではなく、まず運用の全体像を可視化し、役割と責任を明確にしたうえで、統合的に運用を設計することです。
日本企業には、創意工夫や改善を重んじる文化があります。システムも、会社や事業部ごとの事情に合わせて最適化する形で作り込まれてきました。もちろん、購買プロセスや各種法的要件への対応など、言語や制度の違いから一定のカスタマイズが必要となる場面もあるでしょう。
一方で、そうしたアプリケーションのカスタマイズの積み重ねがITインフラの標準化を妨げ、運用負荷を高めてしまうことがあります。欧米でも同様の課題を抱えた時期がありましたが、プラットフォームサービスの普及とともに「極力カスタマイズしない」方向へ移行しました。
カスタマイズは、当初は現場に合わせた最適化であっても、時間の経過とともに変更しにくい負の遺産として残りやすいものです。こうしたカスタマイズが将来の変更や標準化を難しくしている現実を直視することが、グローバル標準に近づくための出発点になります。
日本に本社を置くグローバル企業では、事業拡大やM&Aに伴い、これまで管理対象外だったITインフラがガバナンスの対象に加わるケースが増えています。こうした環境では、国や地域ごとの違いに加え、グループ企業や事業ごとに異なる業務プロセス、システム化方針、IT成熟度などを背景に、異なる前提で構築されたITインフラが混在しやすくなります。
その結果、グローバル基盤の統一や標準化に踏み切れないまま、管理負荷だけが増大しているケースも少なくありません。
全体を可視化し、どこを共通化し、どう地域や事業ごとにガバナンスを強化していくか。その判断を支える運用設計とガバナンスの仕組みが、グローバルに事業を展開する企業ほど重要になります。
では、こうした構造的な課題をどう乗り越えるべきでしょうか。これからのIT運用に求められるのは、単にシステムを安定稼働させることにとどまりません。AI、クラウド、データ活用といった新しい技術を安全かつ継続的に取り入れ、事業変革を支える基盤へと進化していくことです。
そのためには、IT部門を日々の運用負荷から解放し、変革に向き合える状態をつくる必要があります。重要なのは、運用業務を単に外へ出すことではありません。運用の全体像を可視化し、標準化できる領域を見極め、反復的な業務を自動化しながら、人が担うべき判断や企画にリソースを移していくことです。
その第一歩は、現状を可視化し、IT部門がどこに時間と人材を使っているのかを把握することです。そこから標準化や自動化を進めることで、変革に向き合う余力を生み出していきます。
こうした運用モデルの進化は、Autonomous Operations、すなわち自律性の高い運用への移行として捉えることができます。そこに到達するためのステップとして、人とAIが役割分担しながら、運用の安定性、可視性、統制を高めていくアプローチが有効です。
近年、企業から寄せられる相談の内容にも変化が見られます。かつては「インドのリソースを活用してコストを下げたい」という入口が多かったのですが、最近では「グローバルガバナンスを実現したい」「人依存から脱却したい」といった、中長期の変革を見据えた相談が増えています。
こうした変化の背景には、グローバル化の進展や人材不足に加え、AI活用への期待の高まりがあります。しかし、AIは魔法ではありません。運用プロセスが整理されておらず、情報が分散し、責任分界が曖昧な状態では、AIを導入しても十分な効果は得られません。
AIを活用するためには、まずAIが機能する前提となる運用プロセス、データ、責任分担を整えることが不可欠です。そのうえで、どの領域を標準化し、どこから自動化し、どの水準まで運用モデルを高度化するのかを見極める必要があります。
これからのIT運用で目指すべきなのは、「人がすべてを担う運用」から、「人とAIが役割分担する運用」への移行です。そのためには、AIに任せられる領域と、人の知見が必要な領域を見極めながら、安定性、可視性、統制を備えた運用基盤を整える必要があります。
守りを整えることは、単なる保守の強化ではありません。AIを活用できる状態、すなわち「AI-Ready」な運用基盤を実現し、攻めの施策を機能させるための前提なのです。
IT運用の変革は、まず現状を可視化し、自社の運用がどの成熟度にあるのかを把握することから始まります。そのうえで、運用のばらつきを整理し、標準化や自動化、AI活用を段階的に取り入れていくことで、IT部門はより付加価値の高い役割へ移行しやすくなります。
実際に、運用体制の見直しが進むと、IT部門で交わされる議論の内容も変わっていきます。これまでベンダー管理やコスト管理、障害対応が中心だった企業でも、新しい運用体制への移行後には、モダナイゼーション、クラウド活用、AI適用PoCの推進といった変革テーマへ議論が移っていくことがあります。
また、これまで保守・運用に多くの時間を割いていた人材が、セキュリティ強化、社内のAI活用推進、クラウド化プロジェクトといった領域に関わるようになるケースもあります。
IT運用の最適化は、運用部門だけの改善にとどまりません。日々の運用に埋もれていた人材や知見を、変革に向けた取り組みに振り向けること。そこに、IT運用変革の本質的な価値があります。
グローバル連携を前提とした運用への変革は、体制やシステムを変えるだけでは完結しません。社内ドキュメントの書き方、コミュニケーションのあり方、意思決定のプロセスにおいても、企業側の意識と行動の変化が求められます。
たとえば、運用移行プロジェクトをきっかけに、英語を前提としたコミュニケーションを意識する、翻訳しやすいように主語・述語を明確にした日本語で書く、といった社内ルールを取り入れた企業もありました。これは単に英語を使うという話ではありません。国や地域を超えて多様な人材と協働するために、情報を誰にでも伝わる形で整理し、意思決定や業務の進め方を明確にしていくということです。
こうした取り組みは、国内中心の業務環境に慣れた組織にとっては大きなチャレンジですが、グローバルなリソースや知見を活用するうえでは、働き方そのものを見直す重要な一歩になります。
グローバルなIT運用モデルを考える際、インドは有力な選択肢の一つになります。
IT人材の層の厚さや技術力の高さに加え、IT分野への志向性も際立っています。また、各国と一定の関係を築いていることから、地政学的な観点でも、グローバル運用におけるリスク分散に寄与し得る拠点といえます。
ただし、大切なのは「どの国が良いか」を単純に比較することではありません。自社にとって持続可能な運用モデルをどう作るかです。
日本TCSは、インドを中核としたグローバルデリバリー体制と日本国内の支援拠点を組み合わせ、日本企業が段階的に運用モデルを移行できる体制を整えています。インドにある日本企業向けデリバリーセンターJDC(Japan-centric Delivery Center)を中心に、日本語対応を含む支援を行っています。
また、グローバルデリバリーの実態をより具体的に理解していただくために、必要に応じて、インドのデリバリーセンターを訪問いただき、現地のプロジェクトマネージャーやエンジニアと直接対話する機会も提供しています。現場の規模感や技術力を体感されることで、日本国内だけでリソースを確保する発想から、グローバルな知見と人材を活用する発想へと視点を広げる契機になります。
日本企業のIT変革を支えるうえで、パートナーに求められることは何でしょうか。それは、グローバルな標準モデルを一方的に持ち込むことではなく、日本企業が抱える課題を理解し、実運用に落とし込む力です。
日本企業の課題を解決するには、国や地域を超えてリソースとソリューションを活用するモデルへの移行が欠かせません。しかし、その移行は一足飛びには進みません。既存の運用体制、社内の意思決定、言語、ドキュメント、現場の習熟度を踏まえながら、段階的に進める必要があります。
ここでいうグローバルデリバリーモデルの活用は、業務を外に出すこと自体を目的とするものではありません。運用の可視化、標準化、自動化を進め、IT部門が変革に向き合える状態をつくるための実行基盤として位置づけられます。
当社は、インドを中核としたグローバルデリバリーモデルと、日本のお客さまへの支援体制を組み合わせ、IT運用の安定化から高度化、さらにAutonomous Operationsへの段階的な移行までを支援しています。重要なのは、サービスを導入することそのものではなく、お客さま自身がIT部門を保守中心の組織から、変革を推進する組織へ転換していくことです。その変化を現場レベルで一貫して支えることに、パートナーの価値があります。
こうした変革を支えるパートナーには、単に運用を引き受けるだけでなく、IT運用の成熟度を客観的に把握し、運用プロセスや体制、責任分担、ナレッジ、コスト構造を可視化したうえで、標準化、自動化、AI活用へと段階的に進める力が求められます。また、管理体系や委託先が分かれている状態でも、分析や意思決定に必要なデータをつなぎ、全体を見渡せる状態をつくることも重要です。
さらに、国内には四国デジタルイノベーションハブを設置しています。同拠点は、グローバルモデルへの移行を日本のお客さまの現場に根づかせるための国内支援拠点です。日本語ドキュメントへの対応、移行時の調整、現場とのコミュニケーション支援などを通じて、インドを中心とするグローバルリソースと、日本企業の業務実態との橋渡しを担います。
複数のベンダーにまたがるIT運用を整流化し、運用プロセス、体制、責任分担、ナレッジ、コスト構造を可視化しながら変革していく。その過程で、お客さま側のガバナンス強化から、グローバル運用体制の構築、自律性の高い運用への段階的な移行までを一貫して支えることが、日本TCSの支援の特徴です。
グローバル標準の強みと、日本企業の現場感覚。その双方を生かしながら、実際に運用が回る形へ落とし込めることが、IT変革のパートナーに求められる実装力です。
IT運用の見直しは、単なる効率化やコスト削減の取り組みではありません。時間の経過とともに、IT運用を支えてきたシニア層が退職し、運用ノウハウが失われるリスクも高まります。そうなる前に、運用を見直し、AIやクラウド、データ活用といった新しい挑戦を支える土台を作ることが重要です。
どのアプローチが最適かは企業によって異なります。まずは自社のIT運用がどのような状態にあるのかを可視化し、どこに負荷が集中しているのか、どこを標準化できるのか、どの領域で外部の知見を活用すべきかを整理することから始めるべきです。
IT運用の変革は、ベンダーを変えることだけでは実現しません。企業自身が、仕事の進め方、情報の残し方、意思決定のあり方を変える覚悟を持てるかどうか。その覚悟こそが、IT部門を保守の現場から変革の担い手へ転換する出発点になります。
IT部門を「保守の現場」から「変革の担い手」へと転換し、次世代に対応する企業へと進化させる。守りを整えることは、変革を遅らせるためではなく、最も早く攻めに転じるための道です。そのための第一歩を、いま踏み出す時期が来ているのではないでしょうか。
高品質、コスト最適化、グローバルガバナンスの確立、更にはシステムの拡張性も備えた持続可能な次世代IT運用の実現をITインフラストラクチャーサービスがお手伝い致します。