TCS AI Studioについて
TCS AI Studioは、ワンストップでお客さまのAIジャーニーを構想、定義、実現する共創ハブです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)においてAIを採用・実装する際の障壁を取り除き、収益、生産性、コスト抑制に対するAIの価値の影響に適切に対処できるよう設計しています。
またAIの運用や蓄積されたノウハウの確保に高額な投資を行うという課題を克服するためのソリューションにも取り組みます。
企業でのAI導入の機運がかつてないほどに高まっています。同時に、経営者やIT担当者には高い期待と大きなプレッシャーを感じている方もいるのではないでしょうか。導入を考えてはいるが、何から始めればいいのか分からない。導入したものの、どう使いこなせばいいのか分からない。そもそも、導入を進めていくための組織内のケイパビリティが足りていないといったことに頭を悩ませているところかもしれません。企業がこれからAIを効果的に活用していくポイントについて、日本TCSのトンプソン ジョエル博士が解説します。
日本TCS AIセンターオブエクセレンス本部ヘッド
トンプソン ジョエル博士
ビジネスの場でAIの活用をテーマに話をしていると、「なぜ海外に比べて日本のAI活用は遅れているのか」という質問をよく耳にします。私はこの問いに疑問があり、単純に日本と海外で比較できるものではないと考えています。
総務省が発表している令和7年版 情報通信白書「企業におけるAI利用の現状」によると、AIを活用する目的について、日本では業務の効率化や人員不足の解消を挙げている企業が最も多いことが分かっています。一方、欧米や中国では、ビジネスの拡大や新規顧客の獲得、イノベーションの創出といったことが重視されています。
生成AI導入の懸念も異なり、日本では効果的な活用方法が分からないことを最大の懸念事項として挙げている企業が多いのに対し、欧米や中国はコスト面が最も大きな懸念事項です。
導入の目的や懸念にこのような明確な違いがあることからも、単純な比較は成り立たないことが分かります。だからこそ、日本企業が抱える特有の課題を掘り下げ、その上で最適なアプローチを選ぶ必要があります。
それでは、日本企業のAI導入を阻む原因は何なのでしょうか。主に3つの要因があると考えています。
多くの企業がコンサルタントからAI活用に関するさまざまな提案を受けています。しかし、豊富な選択肢を前にしてプロジェクトが行き詰るケースが少なくありません。この根本原因は、自社特有のニーズに合わせてAI活用を計画し、導入をリードできる人材が組織内に不足していることにあります。
こうした人材がいないと、チームは具体的なユースケースを理解できず、プロジェクト実行のノウハウも不足しがちです。例えば、導入効果を測るには、「業務効率を5~10%改善する」といった定量的な目標とKPI設定が不可欠であり、それによって初めて導入のインパクトを可視化できます。
また、効果的なAI導入の第一歩は、特定のソリューションに頼るのではなく、まずは自社固有の課題と戦略的な優先事項を分析することです。ベンダーが起点ではなく、自社の目的に合った技術を選択することが必要となります。
投資予算を確保するためには、KPIに基づいた適切なユースケースを選択することが重要です。AIの活用は変革の可能性を秘めていますが、必ずしも投資額に比例したリターンが得られるとは限りません。成功の鍵は、明確なビジネス成果の定義、定着に向けたチェンジマネジメント、そして自社の成熟度がどの段階にあるかの現実的な理解といった要素と、技術を整合していくことにあります。
組織内からROIを示すよう求められる一方、AI導入には実験的な挑戦のための予算を確保する姿勢も重要です。現実のビジネス環境でAIの潜在能力を最大限に引き出すためには、探求と実験を続け、成功と失敗の両方を受け入れる向き合い方が欠かせません。
日本の優れたプロダクトを支えてきた企業文化が、時にAIの導入・活用を遅らせる要因にもなります。
日本の企業は海外に比べて、あらゆる面で完璧さを追求し、説明責任を求める傾向が見られます。何かを始める前には、すべての手順とリスクを洗い出し、関係者全員の合意形成がなければ次の段階に進まないといった、慎重なプロセスが重視されます。
安全性やセキュリティ、チームワークへの高い意識が日本の企業の特徴ですが、AIソリューションのように、完璧ではなく特に説明可能性に課題を抱える生成AIとは相反することがあります。成功のためには、成果を出している海外企業の動向にも目を向け、AI活用を推進する強い意志と、決断した以上はその変化を受け入れていく柔軟性が不可欠です。
こうした背景を踏まえ、どのようにAI導入を進めていけばよいのでしょうか。現在、企業で採用されているのは、組織内にAIに特化した新しいチームを設けるアプローチです。3つの主要なステップを実行することで組織におけるAI導入を促進できます。
AIプロジェクトを成功に導くには、戦略から実装までを一貫して担えるチームが不可欠です。そのため、コンサルタント、アーキテクト、AIエンジニア、データサイエンティスト、フルスタックエンジニア、クラウドやDevOpsエンジニアといった専門家を集め、強力な技術者チームを編成します。このチームは技術と導入戦略の双方に対する深い理解に基づき、AIプロジェクトを力強く推進します。
さらに、多様なバックグラウンドを持つチームにすることで、既存の企業文化に新たな視点をもたらし、変革へのオープンなマインドセットを育む効果もあります。優秀な人材を確保するため、チームの拠点を海外に移す企業もあります。
CIO直下にIT・ビジネス両部門のメンバーで構成される「AI戦略統括チーム」を設置します。このチームは、AI技術の中核チームによるプロジェクト推進を全社的な取り組みとして定着させ、AI導入の推進、KPIによる評価、拡大していくための標準化を進めます。
特に、日本企業に不可欠な安全性を担保するため「ヒューマン・イン・ザ・ループ」(判断や制御の一部に人間が介在する設計)を徹底し、従来型AIと生成AIを組み合わせることで説明可能性にも対応します。この戦略統括チームは、こうしたガバナンスと安全要件に基づいた意思決定と実行を迅速に行うため少人数で構成します。
そのアプローチは、自動運転がレベルに応じて自律性を高めるモデルのように「AI 20%:人間80%」といった連携から始めます。そして初期段階を「未熟な段階」と見なすのではなく、「人間とAIの協業の成果を最大化するのに必要な段階」と位置づけ、段階的にAIの役割を拡大させます。
生成AIと従来型AIを組織内で大規模に活用できる、堅牢かつ柔軟なコアAIシステムを設計・構築します。また、さまざまなユースケースで共通利用できるAI基盤機能を備えた、横断型AIシステムも整備します。これらのシステム内に強固なガバナンス体制とリスク管理を組み込むことで、セキュリティを確保し、脅威に対応します。これにより、ビジネスユースケース創出の規模拡大と効率化を実現し、ビジネスユーザー自身がより適切な意思決定と実行のために独自のソリューションを構築できるようになります。
AIを導入する上で、「何をすればいいか分からない」「どう使えばいいか分からない」「ケイパビリティが足りていない」という日本企業の代表的な3つの課題を、私たちはそれぞれ「ビジネスバリューギャップ」「ユーザビリティギャップ」「ケイパビリティギャップ」と定義しています。
AI活用によって価値を生み出すためには、この3つすべてに対応しなければなりません。これらのギャップをある段階まで埋めることが、企業が効果的にAIを活用できる基礎につながります。
ビジネスバリューギャップを埋めるために、日本TCSではグローバルでの利活用事例とローカルなビジネス環境、両方の知見を持つコンサルタントが、お客さまと共にAIロードマップの策定から、ユースケースの選定、KPIの定義、各種の要件定義、ソリューション設計までを支援します。
ユーザビリティギャップには、実際のソリューションを用いたデモを通してお客さまの理解を深め、組織内での実践的な活用を支援します。
ケイパビリティギャップには、お客さまが直面する共通課題に対するプロトタイプやアセットを準備し、デモとディスカッションを経て、お客さまに最適化した実装を提案します。
日本TCSのAIセンターオブエクセレンス(AI CoE)のお客さま向けエンゲージメントセンターであるTCS AI Studioには、当社の誇る多様な人材、知見、ソリューション、プロトタイプ、フレームワークが結集しています。経営層から現場の担当者までを対象に、ワークショップを通じて、これら3つのギャップすべてに対応します。
お客さまのAI成熟度を問わず、特定のツールやプラットフォームに依存しない中立的な視点でご支援できるのが私たちの強みです。プロトタイプのカスタマイズによる迅速な導入をはじめ、必要な機能をブロックのように組み合わせ、アイデアを形にするアプローチで柔軟な機能拡張も実現します。
AIは今後、世界経済にどのような影響を与えるのでしょうか。
AIを大規模に活用しないことでどのような損失が生じるのか、まだ不透明な点が多くあります。しかし、製品開発の観点では、AIを活用しない製品は市場投入のスピードや機能面で他国に遅れをとり、競争力を失うリスクがあります。開発期間を例に挙げると、AIを活用しない場合2年かかる製品が、AI活用により1年に短縮されることもあり得るのです。こうした開発力の差は、いずれ国や社会全体に大きな影響を与える可能性があります。
米国、欧州、中国といった国々は、大規模言語モデルの開発に巨額の投資を行っており、AIの可能性に高い期待を寄せています。こうした状況に対し、日本も投資を急いでいます。それが世界経済にどのような影響を与えるかはさておき、今後のビジネス成長においてAI導入が不可欠な要素であることは間違いありません。
日本TCSは、お客さまのAI活用の道のりを、共創から設計、PoC/PoTソリューションの開発、大規模AIシステムの開発、AIシステムとモデルのサポート・保守、そして社内への浸透・展開まで、幅広くサポートします。ユースケースの選定、AIシステム設計、AI導入、既存AIシステムの改善など、課題や不安をお持ちの方は、ぜひ当社のAI Studioにご相談ください。
TCSのケイパビリティを知っていただくためのインスピレーションセッション、 具体的な次のステップを計画するための共創ワークショップ、TCSのソリューションアプローチに沿って特定の課題や改善点について議論するコンサルティングセッションなど、さまざまなセッションをご用意しております。
TCS AI StudioのAIエキスパートが皆さまをお迎えいたします。
TCS AI Studioは、ワンストップでお客さまのAIジャーニーを構想、定義、実現する共創ハブです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)においてAIを採用・実装する際の障壁を取り除き、収益、生産性、コスト抑制に対するAIの価値の影響に適切に対処できるよう設計しています。
またAIの運用や蓄積されたノウハウの確保に高額な投資を行うという課題を克服するためのソリューションにも取り組みます。
私たちは変革のパートナーです
お客さまのAI導入に向けて経験豊富なAIの専門家が包括的にサポートをします。
私たちがサポートします
三澤 瑠花
AIセンターオブエクセレンス本部 AIラボヘッド
國澤 龍之介
AIセンターオブエクセレンス本部 AIラボ データサイエンティスト
神田 瑛美理
AIセンターオブエクセレンス本部 AI Studio AIアナリスト