サイバーセキュリティを取り巻く環境は年々複雑化・高度化しています。企業においても全社的なセキュリティ体制の整備が求められる中、広く活用されているのが「NISTサイバーセキュリティフレームワーク(NIST CSF)」です。
本記事では、TCSが支援する、“限られたリソースでも成果を出す”KPIを活用したNIST CSFの運用方法をご紹介します。
NIST CSFは、企業がサイバーセキュリティ対策を体系的に進めるためのフレームワークです。2024年に発表されたバージョン2.0では、従来の5機能である「Identify(ID)」「Protect(PR)」「Detect(DE)」「Respond(RS)」「Recover(RC)」に加え新たに「Govern(GV)」が追加され、全体で106のサブカテゴリが定義されました。
NIST CSF 2.0を導入すれば、自社のセキュリティ体制を網羅的に分析できます。しかし、すべての項目を同時に実装・維持することは現実的ではありません。リソースが限られる企業にとっては、106のサブカテゴリのうちの「どこから着手すべきか」を判断すること自体が大きなハードルとなります。
セキュリティ強化を進めるには、まず、「限られたリソースでどこまでを目指すか?」という問いに、明確に答える必要があります。そのためには、自社のビジネスモデルやリスクプロファイル、社内体制を踏まえて、「いつ」「何を」「どこまで」対応すべきかといった「現実的な目標(≠理想)」の再設定が不可欠です。
この目標を単なる理念やスローガンで終わらせず、具体的なアクションに結びつけるためには、KPI(重要業績評価指標)の活用が有効です。
KPIは施策の進捗を定量的に把握するための指標です。組織内の合意形成や説明責任を明確化するだけでなく、継続的な改善活動の起点にもなります。KPIの活用で、セキュリティ活動を“見える化”し、行動につなげていくことができるのです。
TCSでは、NIST CSF 2.0のフレームワークをKPI設計と連動させるアプローチを展開しています。本来、NIST CSFは「何をすべきか」を示した指針であり、KPIとの直接的な連動は想定されていません。TCSはNIST CSFのサブカテゴリを目標管理の基点として捉え直し、施策の進捗をKPIで定量評価する仕組みを支援しています。
すでに触れたように、限られたリソースを有効に使うためには「どこから着手すべきか」の見極めが欠かせません。
この課題を解決するのが、TCSが独自に設計した優先度評価表です。実効性や重要性の観点から、NIST CSF 2.0における各サブカテゴリの実装優先度を可視化します。
優先度を明確にすることで、短期で着手すべき項目と、中長期で取り組むべき項目が整理され、施策をリソースに見合った実行計画に落とし込むことができます。
たとえば、NIST CSF2.0のサブカテゴリ「ID.AM-02(情報資産のインベントリ維持管理)」では、「すべての情報資産が把握され、最新状態で管理されていることが理想」とされています。
この項目をもとに自社の現状を評価した結果、以下のような課題が明らかになったとしましょう。
このような状況では、情報資産の全体像を正しく把握することは難しいです。リスク評価や保護対策の適切な実施にも影響が出かねません。
そこで、現実的な目標として「インベントリ情報の網羅性と更新性を高める」ことを設定します。追加リソースの投入が難しい状況でも実行可能なKPIとしては、以下のような指標が有効です。
このように実行可能なKPIを設定することで、
といった効果が得られ、目標達成に向けた取り組みを着実に前進させることができます。
NIST CSFの導入における最大の障壁である「限りあるリソースでどこまで目指せばよいか分からない」「優先順位をつけられない」という悩みに対し、TCSでは以下のような実践的支援を行っています。
これらの支援により、NIST CSF 2.0のフレームワークを “業務現場で使える”セキュリティ管理の仕組みとして機能させることができます。
NIST CSF 2.0は包括的なフレームワークだからこそ、運用にあたっては優先度の整理と実行可能性の見極めが欠かせません。TCSは、「現実的な目標設定」と「KPI」という“行動のものさし”で理想と現実をつなげ、成果の見えるセキュリティマネジメントを支援します。
今後も、フレームワークの「活用」に焦点を当てた実践的な支援で、お客さまの継続的なサイバーセキュリティ強化を後押ししてまいります。