独自のAI や発想力で 建設業界の生産性・安全性改善に挑む
東京海上日動火災保険株式会社・東京海上日動システムズ株式会社
イベントレポート
AWS Summit Japan 2025
TCSの6分野にわたるサービスの展示内容と、お客さま事例のご紹介
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ（日本TCS）は、2025年6月25～26日の2日間にわたって幕張メッセ（千葉市）で開催されたアマゾン ウェブ サービス（AWS）のイベント「AWS Summit Japan 2025」に、ゴールドスポンサーとして出展しました。
ブースでは生成AIをはじめとする6分野にわたる展示を行い、26日のパートナーセッションでは、東京海上日動システムズ株式会社 デジタルイノベーション本部 データ活用部の新川 祐樹 氏に登壇いただき、AI活用を支えるクラウド基盤と組織体制の重要性について、具体的な事例を交えてお話しいただきました。
本稿では、日本TCSのブースの展示内容や来場者の反応に加え、セッションの詳細な内容についてレポートします。
AWS Summit Japan 2025で日本TCSが掲げたコンセプトは、昨年に引き続き「AI First Enterprise」。
今回は、生成AI、データクラウド、SDM（ソフトウェア・デファインド・モビリティ）、サイバーセキュリティ、IoTプラットフォーム、デジタルマネージドサービスの6分野にわたる展示を行い、幅広い領域でのデジタル変革支援を提案しました。
生成AI領域
生成AI領域では、TCSが経験・提供してきた豊富な活用事例を体系的に紹介しました。インフラ運用保守から、手順書提示チャットボット、医療分野の大規模言語モデルや生成AIロボットアームまで、多様な業種の事例をニーズに応じて案内しました。
お客さまからは「生成AIの仕組みを導入したものの、精度が高まらない」といった既存システムの改善に関する相談が多く寄せられ、TCSの事例への関心の高さが伺えます。
データクラウド
データクラウドでは、お客さまから「データはたくさんあるが活用方法がわからない」「処理に時間がかかる」という課題をお聞きしました。TCSでは、企業のデータ成熟度に応じた段階的アプローチを提案しています。
データ活用戦略が不明確な企業には、成熟度アセスメントから課題分析・ロードマップ策定まで体系的に支援し、データ保有企業には、処理時間短縮やAI活用基盤の構築をサポートします。
自動車業界向けソリューション
自動車業界向けソリューションでは、SDM時代に対応したプラットフォームを紹介しました。車両1台から得られる膨大なデータの中から、このプラットフォームによって価値の高い情報を抽出・活用することができます。
また、F1仕様の高精度センサーデータを活用した運転行動分析システムや、OTA、リモートサービス、インフォテイメントを統合管理できるソリューションを展示し、注目を集めました。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティ分野では、AI主導の脅威ハンティングとサイバーハイジーンをテーマに展示を行いました。TCSのグローバルな展開力を活かし、海外子会社も含めたグループ全体のセキュリティ強化や、生成AI活用に伴う新たな脅威（情報漏洩、Jailbreak対策、データ汚染）への対策についても紹介。また、パートナー企業であるSplunk、Illumio、SentinelOneとコラボしたスタンプラリー企画も好評で、ソリューション理解の促進につながりました。
IoTプラットフォーム
IoTプラットフォームでは、AWSなどを活用したビジネスDX支援の導入コンサルティング、開発、メンテナンスについて解説。TCSのソリューションを用いて、センサーからエッジ、クラウドに至るIoT環境構築と活用方法を紹介し、国内外の先進事例を含め、さまざまな業界に横断的に展開可能であることを説明しました。
デジタルマネージドサービス
デジタルマネージドサービスでは、デリバリーのプロセス、AI駆動の自動化プラットフォーム、ITインフラ・アプリケーションの統合運用などについて、事例を交えて解説しました。
セッションタイトルは「AI活用を支えるクラウド基盤と組織体制の重要性～東京海上日動の実践事例～」。保険業界におけるAI活用の先進事例として、多くの来場者の注目を集めました。
冒頭に挨拶した日本TCSの三澤瑠花（AIセンター オブ エクセレンス AIラボ ヘッド）は、2020年から始まった東京海上日動システムズとのAIに関する取り組みについて紹介しました。2023年からは生成AIの取り組みを本格化させ、2024年に設立した組織であるAIセンター オブ エクセレンスを通じて、ニーズ特定からソリューションデザイン、クラウド展開まで一貫した支援を行っています。
東京海上日動システムズは東京海上グループのIT戦略を担うシステム子会社として、グループ全体の情報システムの設計開発から保守運用、システム活用支援を行っています。新川氏は、東京海上日動グループのデジタル活用のための組織体制とAI戦略について説明しました。
AI・データ活用には、生産性向上を最優先に取り組みつつ、事業成長や品質強化にも並行して取り組み、そのための基盤の構築が必要不可欠です。同社は、特徴的な取り組みとして、内製化による知財ノウハウ集約とコスト抑制を目的としたグループ横断組織「AI-HUB」を設置しました。ここでは、グループベースの戦略策定、国内外グループ会社のAI開発・データ分析支援、ガバナンス策定・運用を担っています。
注目すべきは「データサイエンティスト」に加え、幅広い専門性を持つ「データスチュワード」という独自に定義したロールです。新川氏は「データスチュワードの多くは元々システムエンジニアで、システムエンジニアとデータサイエンティスト双方のスキルをバランスよく保有しています。これにより、プロジェクトマネジメント力や要件定義力を活用した、データ分析プロジェクトの円滑な推進が可能になります」と説明しました。
さらに、2025年4月には「ビジネスアクセラレーション本部」を新設。ビジネス企画段階からIT・データ人材の目線を盛り込むことで、施策や事業構想の実現性を高め、効果の最大化を目指しています。
東京海上日動システムズではAWS環境などを使い、AI活用を支える基盤を構築しています。
データ分析環境「AI-Lab」では、データレイクおよび分析プラットフォームとしてDatabricksを採用し、データサイエンティストが高度な分析を実現。ライトユーザー向けにはTableauを展開し、アドホック分析やダッシュボード開発を支援しています。
AI稼働環境「AI-RUN」は、生成AIモデルと利用データを統合し、ガバナンス・コスト・スピードの3つの観点から最適化されたプラットフォームです。社内の生成AI ノウハウ蓄積を目的として内製開発中で、最初のユースケースとして照会応答システムを構築しています。新川氏は「検索精度を高めるため、データ加工やモデルの組み合わせなどさまざまな工夫をしました。日本TCSのメンバーにも協力いただきながら試行錯誤を行いました」と振り返ります。
さらに、東京海上日動グループにおけるAI関連の事例を説明しました。「One-AI for Tokio Marine」は、2023年10月に導入された対話型の生成AIプラットフォームです。アジャイル開発による内製で継続的に機能拡張を行い、LLMバージョンアップ、ファイルアップロード、会議メモ、マイデータ検索（RAG機能）などを次々に実装。ユーザー数約20,000人、1日平均利用回数10,000〜12,000件という規模で、1年前と比較して3倍以上の利用回数を記録するなど、現在も成長中です。
「マーケットインナビ」は、音声入力と生成AIを活用して営業社員の経営コンサルティングをサポート。AWS上の生成AIサービスによって、打ち合わせの対話記録から経営課題を抽出し、解決策として保険プラスアルファを推奨する仕組みを構築しています。
建設現場におけるAI活用として、日本TCSと共同開発した建設機械向けテレマティクスサービスでは、ドライブレコーダーのセンサーデータから毎秒の建機挙動を予測するAIモデルを構築。例えば、ショベルカーでの掘削作業を長時間続ける作業者に休憩を促すアラート機能により、建設現場の安全性と生産性向上を支援しています。
セッションのまとめとして新川氏は、
の３つをAI活用成功のポイントとして挙げました。
東京海上日動火災保険株式会社・東京海上日動システムズ株式会社
AWS Summit Japan 2025の2日間を通じて、非常に多くのお客さまにお越しいただきました。AIやデータ活用に関心を持ちながらも、その導入や活用を妨げるさまざまな課題を抱える方が多く、その悩みの深さと関心の高さをあらためて実感しています。
技術の進歩が加速する今、企業には迅速な意思決定と継続的な学習が求められています。日本TCSは、グローバルで培った豊富な経験と先端技術への深い知見を生かし、お客さまのビジネス変革を継続的に支援するとともに、データとAI活用による変革の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
デジタルトランスフォーメーションを加速させるために、AWSクラウド上で継続的にイノベーションを創出できるようTCSのもつ最適なソリューションを提供します。