セキュリティの管理体制を刷新する背景について、「根底にあるのは、業務アプリケーションなどのクラウドサービスの急速な普及と、それに伴うITインフラのパラダイムシフトだと考えています」と語る鶴田氏。そのため大正製薬では近年、従来の閉域網中心のネットワークからインターネットベースのオープンネットワークへの移行を進めています。
「この流れはコロナ禍を契機に加速しており、セキュリティの考え方自体を大きく転換する必要があります。そこで今回はプロジェクトのスコープを、国内はネットワークの再設計によるSASEの実装、資産管理ソリューションの導入、ID管理の強化に定めました。海外拠点を含むグループ全体については、日本を皮切りにセキュリティ管理の強化、グローバルSOCによるインシデント対応力の強化、EDRによるエンドポイント保護の実現を目指しました」(鶴田氏)
これらのミッションを完遂するためには、総合的な支援体制を備えたパートナーの存在が欠かせないことから、同社は日本TCSに支援を要請することを決定しました。IT企画部 グループマネージャーの榎本 聡明氏は次のように話します。
「クラウドサービスの利用拡大に伴うセキュリティリスクの高まりに対処するため、ネットワークの内部と外部を区別せずに検証して脅威を防ぐ”ゼロトラスト”を前提にすると、連携に手間がかかるベスト・オブ・ブリードではなく、ネットワークやエンドポイントのガバナンスが統合されたソリューションを採用する必要があります。
この観点から、①各領域のソリューションを扱える技術力があること、②開発から運用まで幅広く対応できる専門家をアサインできること、③インドのオフショア人材のケイパビリティを活用できることの3点を評価して日本TCSを選定しました。日本TCSには、以前にもグローバルIT基盤のAWS移行で支援を依頼したことがあり、その実績も評価しました」
2023年4月にキックオフした国内プロジェクトでは、2024年8月にかけてセキュリティガバナンスの標準化、SOCを活用したインシデントの可視化、ネットワークとの統合運用などを実現しました。その後、アジアの主要拠点であるマレーシア、インドネシア、ベトナムに先行展開し、インシデント管理とEDRソリューションの導入が完了しています。