株式会社カインズ

Enterprise Aspirations

株式会社カインズ様

 

圧倒的に楽しい店舗をITの活用で創り上げたい

日本の大手ホームセンター「カインズ」デジタル化の仕掛人・池照直樹氏。
「IT小売企業」を目指すカインズの戦略を基に、小売業の未来像などについてお話を伺いました。

池照 直樹氏
株式会社カインズ
執行役員 CDO(チーフデジタルオフィサー) 兼
CMO(チーフマーケティングオフィサー) 兼
デジタル戦略本部長
 

4つの戦略の柱と4つの顧客体験施策

株式会社カインズ(カインズ)は、デジタルの仕組みも含めて「4 つの戦略の柱」(図1)を立てて、次のカインズを創るべく、商品・サービス・空間で総合的に新たな顧客体験を創造し、メンバー(従業員)へのカインドネスで好循環を生み出すことに取り組んでいます。

デジタル技術はその一翼を担うものです。実店舗とテクノロジーを掛け合わせることで、4つの顧客体験に進化させ、デジタル時代でも選ばれる「IT 小売企業」を目指しています。その具体的施策として、既に幾つものアプリをリリースしています。まずお客さまの購買体験を進化させるツール「カインズアプリ」。

これはコンシェルジュアプリというべきもので、お客さまの欲しい商品が、広い店内のどこにどれだけあるかが一目で分かります。オンライン注文時に取り置き、さらに決済まで可能です。また「CAINZ PickUp」は、ネットで注文した商品を、店舗カウンターや「ピックアップロッカー」、さらにはドライブスルー方式で車から降りずに受け取れるサービス。

他にも、「木材カット事前加工サービス」や「CAINZ Reserve」、また店舗敷地内のドッグランの予約なども、いつでもどこからでもアプリで簡単にできるようになっています。こうしたテクノロジーは全て、商品を探し回ったり、レジに並んだり、予約のためにカウンターを訪れたりといった、お買い物について回る煩わしさからお客さまを解放してくれるものです。

カインズ専用オフショア開発拠点開設

これら一つ一つの成果自体は小さなものに思われるかもしれませんが、こうしたことの積み重ねによって、小売業の現場では多くの時間が割かれています。

これらをスピード感を持って解消することでお店をサポートし、お客さまにも新たなサービスを次々と展開していきたい。そうするには「システム開発の内製化しか方法はない」と考えるようになりました。

私は「80 点のシステムを作って、その分早くリリースする」ことが重要だと考えています。残りの20 点は、リリース後に集まる要望と共に直せばよい。ここが内製と外注の決定的な違いです。外部のベンダーであれば、当然リリース時に100 点のシステムを目指しますが、その分開発に時間がかかります。

現在当社では、早ければ2 週間、長くても2カ月程度でリリースし、ある程度規模の大きいシステムでも、その後の修正も含めて3カ月もあれば全店展開できます。こうした仕掛けの展開速度をさらに上げるためには、IT 人材の確保が不可欠です。

当社では、エンジニアの働き方に合わせた勤務体系の子会社の設立など、人材確保のための取り組みを進めてきました。その結果、2019年にはわずか10 人にも満たなかったデジタル戦略本部のメンバーが、今や200 人近くにまで増えました。さらにタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)との提携により、インド・チェンナイのTCS 施設内に当社専用のオフショア開発拠点(CAINZ Offshore Development Center=CODC)を開設しました。TCS のグローバルなリソースとケイパビリティを活用し、さらに開発スピードを上げていきます。

カインズ専用のオフショア開発拠点が設置されたインド・チェンナイのTCS 施設

 

コミュニケーションの壁を克服して現場が動き出す

CODC 開設に当たっては、当社とTCS との日印混成チームによる仕事の進め方を試すために、6カ月ほどのテストプロジェクトを走らせました。その結果、たくさんのフィードバックがあり、その中で最も多かったのがコミュニケーションの問題でした。

まず日本のメンバーの英語力といった言葉の壁。そしてコミュニケーションの仕方、つまり文化の違いです。いずれも解決策は、日本語が堪能なインドのメンバー、文化の違いを理解しているメンバーをアサインし、調整役を担ってもらうチーム構成とすることでした。

苦労しながらも進めていくうちに、お互いに少しずつ歩み寄り、コミュニケーションの改善が進むにつれ、次第に現場がうまく回り出したと聞いています。私が当社のメンバーに望むのは、海外の最先端テクノロジーに触れ、グローバルで活躍するメンバーと一緒に、しっかりコミュニケーションを取って働く環境に身を置くことで、グローバルレベルのIT 人材として育ってほしいということ。

また、会社としても、チーム構成やアーキテクト、フレームワークなど、TCS から学ぶことはたくさんあります。まだ走り出したばかりですが、内製化によるアジャイル開発を進めることで、多くのプロダクトの開発やアーキテクチャの改革といった成果が表れています。また、メンバーの意識が変わり、現場からいろいろなアイデアが湧いて出てくるようになってきたことを、とても心強く感じています。

 

最先端テクノロジーを組み込んだ付加価値の高い店舗

デジタル戦略の進捗にある程度のめどがついたら、次に4 つの顧客体験施策を進めていきます。現在は、その前段階として店舗人員の効率性、いわゆる「人時生産性」(売上高÷総就業時間)の向上に取り組んでいます。

当社開発の特徴の一つが、システムのフロントエンドからの開発です。あえてフロントエンドから着手することで、既存システムの不具合が見えてきます。また、データのクオリティーが低い段階で、システムをお客さまと結び付けてしまうわけですから、「早く改善しなくては」というモチベーションにもつながります。

見つかった不具合を直していくことでビジネスオペレーションが良くなり、結果として人時生産性が上がるというサイクルが回っていきます。人時生産性の向上が一段落したら、いよいよ顧客体験です。

具体的にはe コマースと実店舗の融合。倉庫を持たずに全て店舗出荷をすれば、倉庫代がいらないし、近い店から配送するので配送費も安くなります。何より倉庫より店舗保管の商品数の方が多いですから、取り寄せにかかる時間も短くて済むのです。店舗メンバーがe コマースと触れ合うことで、デジタル文化が店に根付きますしね。

人口減少による超広域商圏時代において、店舗は重要なアセットとして活用すべきです。私が考える理想の店は「圧倒的に煩わしくない店」です。お買い物のあらゆる煩わしさからお客さまを解放して、まるで散歩をするようにスマートフォン片手に買い物をする。将来的にはリアル店舗の先にバーチャル店舗が広がっていたり、店舗がゲームフィールドになってゲーム性のある買い物ができたり…「圧倒的に楽しい店舗」を想像していけば顧客体験の可能性は無限です。

米国のホーム・デポやロウズなどで使われているような、あまり日本にはない技術エリアにもチャレンジして、いろいろな付加価値の付いた店舗を実現させたい。そういう場面においても、TCS には大きな期待を寄せています。

※ 掲載内容は2022年1月時点のものです

寺﨑 亮 様

シーメンスヘルスケア株式会社

カスタマーサービス事業本部 ビジネスサポート本部

ストラテジー&プロセスグループ